ギター初心者から玄人まで、誰もが一度は使ったことのあるアイテムと言えばカポタストです。
SHUBBの「C-1」やKyserの「KG6」などが定番品として知られていますが・・・
近年、Amazonの売れ筋ランキングで常にトップに君臨し続けているのが、Phoenix(フェニックス)の「Type R」というカポ。
調べてみたところ、少なくとも2015年にはランキング1位だったことが確認できたので、この記事の執筆段階(2022年8月)で7年以上もトップに輝いていることになります。
以前から気になっていたものの、その形状からJIM DUNLOP(ジムダンロップ)の「TRIGGER CAPO」のパクリ類似品だろうと、見て見ぬ振りをしていたのですが・・・
さすがに人気のアイテムにふれない訳にはいかない、ということで買ってみました。
Amazonでのレビュー数も多く、大半が好意的な評価ですが・・・
実際に使ってみると、なぜ評価が高いのか分からないほど、重大な欠陥があることに気づきました。
また、Phoenixのカポには様々なタイプがありますが、それぞれの違いについても調べていますので、購入の参考になれば幸いです。
- 見た目はスタイリッシュ
- 剛性は高そう
- グリップのバネが強すぎる
- ピッチがシャープする
- 設計上の重大な欠陥がある(重要)
Type Rの概要
Phoenixの「Type R」は、トリガータイプのバネ式カポタストです。
Type R | |
方式 | バネ式 |
重量 | 42g |
締付調整 | 不可 |
実売価格 | 約1,500円 |
カラーバリエーションは「ブラック」「ブルー」「レッド」「ゴールド」「グリーン」「ピンク」「シルバー」「ホワイト」の全8色。
今回、僕は一番人気の「ブラック」を購入しました。
内容物は「本体」「ファイバークロス」「ピック」「メーカー保証」の4点セットに加えて、「ステッカー」「保証期間延長サービスの案内書」「スタッフからの手紙」も入っていました。
本体の素材はスチールで、ずっしりとして剛性は高そうです。
重量はメーカー非公表ですが、僕が計ると42gありました。
参考に他のメジャーなカポの重量は以下のとおりです。
- SHUBB「C-1」: 51g
- Kyser「KG6」: 42g
- G7th「Performance 3 ART Capo」: 64g
サイズ感は、トリガータイプのカポとしては普通で、カイザーカポよりは小さめ。
SHUBB「C-1」と比較
Kyser「KG6」と比較
開口部は約7〜29mmの間隔で開閉できるので、ほとんどのネックに装着可能です。
指板面はシリコン製で、長さは約57mm。
エレキ・アコギ・クラシック・バンジョー・ウクレレと、幅広い楽器に対応するとのこと。
実際に弦を押さえた姿は、前面に余計な装飾もなくスッキリとした印象です。
ネック裏に当たる箇所にもシリコンがついているのですが・・・
実は、ここが最大の難点でした・・・。
Type Rの使い方
「Type R」の装着の仕方は、とても簡単です。
グリップをギュッと握って、ネックに挟んで離すだけ。
ほぼワンアクションです。
注意点として、片手で着脱できますが、バネの力が強いため握力が弱い人は少々難儀します。
ヘッドに固定できる
バネ式カポならではの利便性と言えば、使わいな時にギターのヘッドに挟んでおけること。
わざわざポケットに仕舞ったりすることなく、スムーズにつけ外しできます。
バネ式カポがライブのステージで重宝される最たる理由がこれですね。
Type Rをレビュー
まず、僕の評価としては・・・
買わないほうが幸せ。
記事の冒頭にも書きましたが、Amazonレビューの多くが好意的な評価です。
ところが、実際に使用してみると・・・
看過できない設計上の重大な欠陥があることに気づきました。
他にもカポとしてイマイチな点もあり、総合的に買わないほうがいい、という結論に至りました。
グリップのバネが強すぎる
これはトリガータイプのカポにありがちな問題ですが・・・
グリップのバネがとにかく強すぎです。
しかも、ギュッと握る時に内部でザラザラとした引っ掛かりを感じます。
油を挿せばなんとかなると思いますが、握力の弱い人にはおすすめできないです。
そしてもうひとつ、親指側の手のひらに当たるグリップにシリコンが付けられていますが、これが結構硬いです。
本来はクッションとしての役割ですが、その役目を果たしていない・・・。
もっと柔らかい素材にしてほしいところです。
ピッチがシャープする
サウンド面に関しては「詰まったような音」という印象。
特に低音域がにごって聴こえ、サスティーンが弱いです。
さらに気なるのが、装着した際のピッチのズレ。
明らかにシャープしているのが分かります。
実際に検証してみると・・・
6弦 | 5弦 | 4弦 | 3弦 | 2弦 | 1弦 |
+1 | +1 | 0 | 0 | +1 | +1 |
ギター : Taylor Builder’s Edition 717e
フレット位置 : 2フレット
チューナー : TC Electronics POLYTUNE CLIP
測定モード : ストロボ
見事(?)なまでに低音域と高音域が1目盛りずつシャープしています。
看過できない設計上の重大な欠陥がある
ここが最も言いたいことです。
下の画像は普通にカポを装着した状態ですが、6弦に注目してください。
もっと近寄ってみると・・・
本来ネックの上部に当たるはずのシリコンの角が、ずり落ちて6弦に当たっています。
この状態で6弦を弾くと、当然ビビります。
こちらは“本家”の「TRIGGER CAPO」
JIM DUNLOP「TRIGGER CAPO」のラバーの角はしっかりネックの上部にある。
本来は「TRIGGER CAPO」のような状態にならないといけません。
しかも「Type R」は、僕のテイラー(Taylor)でもマーチン(Martin)でもヘッドウェイ(HEADWAY)でも6弦に当たります。
つまり、これは明らかな設計ミス。
カポの取り付け位置を調節すれば解決しますが、いちいちそんなことをするなら別のカポで気にすることなく使えたほうが幸せになれます。
実際に買った人の評価は?
実際に「Type R」を購入した人の「良い評価」と「悪い評価」を集めてみました。
【良い評価TOP3】
- 使いやすい
- 弦をしっかり押さえてくれる
- 簡単に装着できる
【悪い評価TOP3】
- グリップのバネが強すぎる
- 弦がビビる
- つくりが雑
良い評価では「使いやすい」というレビューが圧倒的に多かったです。
かなり抽象的な表現ですが、実は「使いやすい」と答えた人の大半が「初心者ですが・・・」「はじめてのカポですが・・・」という書き出しだったので、これがすべてを物語っていると感じました。
悪い評価も「グリップのバネが強すぎる」がダントツでした。
全体的に良い評価と悪い評価が矛盾していて、なんともカオスな状態・・・。
販売先は限定的
「Type R」のメーカー希望小売価格は3,980円です。
実勢売価は時期によってバラツキがありますが、約1,500円が相場。
実店舗では販売しておらず「Amazon」「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」に限定しています。
尚、Yahoo!ショッピングには横流し品と思われるものが多数出品されており、価格も高いため注意が必要です。
タイプ別の「M」「SH」「GF」との違いは?
「Type R」には他にもタイプ別で3種類の製品が存在します。
各タイプの違いは以下のとおりです。
Type M
「Type M」(マイルド)は指板面のシリコンの長さが約50mmのコンパクトサイズ。(Type Rは約57mm)
ローポジションで装着した際に出っ張りが少ないので、よりスッキリして見えます。
Type SH
「Type SH」(ストレート・ヘッド)は「Type R」とほぼ同じ仕様です。
唯一の違いは、本体の顎の部分が尖っているか、尖っていないか、それだけです。
性能面での違いはありません。
Type GF
「Type GF」(グリップ・フィンガー)は、グリップの長さを40mm伸ばして握りやすくしたタイプ。
グリップが長くなることでプレイアビリティにどのくらい影響がでるか気になるところです。
まとめ
今回の「Type R」は、使ってみないと分からない部分が見えたという意味ではレビューして良かったなと思います。
一方で、なぜAmazonで1位なのか?を考察すると、まず売り込み方がうまい。
「カポタスト専門店」「ファイバークロス・ピック付き」「軽量」「ワンタッチ」などのキーワードを、これでもかと前面に打ち出してアピール。
こうした売り込み方は、これまでのカポタストでは見受けられませんでした。
また、2015年当時の実勢売価は約750円だったのが、2022年は約1,500円。
最初は安さを武器にレビュー数を稼ぎながら、段階的に値上げをしていく、まさにマーケティングの妙と言えます。
2020年頃には著名なギター系YouTuberに商品をバラ撒いて提供して、絶賛レビューが量産されたことも人気に拍車をかけたと推測されます。
いずれにせよ、初心者を狙った商売としては大成功と言える商品であることは間違いないですね。