テイラー(Taylor)ギターのエントリーモデルとして、定番3桁シリーズで最も売れていると言われるのが「214ce Rosewood」です。
Image : Taylor
その人気に加え、コロナ禍で本国からの輸入が遅れていることから品薄状態が続いています。
この記事では、そんな214ce Rosewoodの人気の秘密をスペックから検証。
サイド&バック違いの214ce-Koaや、グレード違いのPlusやDLXとの違いについても解説しています。
さらに、上位モデルである314ceとの違いも比較検証。
盛りだくさんの内容になってしまいましたが、是非、読み進めてみてください。
214ce Rosewoodを徹底解剖!
214ce Rosewoodは2007年にテイラーのエントリーモデルとして発表されました。
214ce Rosewood |
ボディ・シェイプ | グランド・オーディトリアム |
トップ材 | シトカ・スプルース |
サイド&バック材 | レイヤード・ローズウッド |
ネック材 | トロピカル・マホガニー |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | X(エックス) |
ピックアップ | ES2 |
上記のスペックから読み取れる214ce Rosewoodの人気の秘密は、以下の通り。
一番人気のボディ・シェイプを採用
ボディ・シェイプとは、いわゆるボディの形状のこと。
テイラーには6つのボディ・シェイプがあり、214ce Rosewoodはグランド・オーディトリアム(Grand Auditorium)、通称GAという形状です。
GAは、テイラーのボディ・シェイプ別の売上では一番人気。
フラットピックによるストロークから、フィンガーピッキングまで幅広いプレイに対応した万能シェイプです。
初心者に限らず、初めてテイラーを買う人が最初に選ぶシェイプとなっています。
アコギでは定番のトーンウッド
トーンウッドとは、楽器に使用される木材の総称です。
アコギのトーンウッドは、主にボディのトップとサイド&バックの2種類に分けらます。
214ce Rosewoodのトップに使われているのは、シトカ・スプルース(Sitka Spruce)という材。

「taylorguitars.com」より引用
アコギでは定番の材で、テイラーでも下位モデルから上位モデルまで、ほとんどのモデルで使用されています。
サイド&バックに使われているのは、レイヤードのインディアン・ローズウッド(Indian Rosewood)という材です。

「taylorguitars.com」より引用
インディアン・ローズウッドは、インド東部が原産のトーンウッド。
切ったばかりの材はバラの様な香りがすることから、その名が付けられました。
そのサウンドは、低音域と高音域が前面に出て、中音域がやや控えめ。
そのため歌モノに最適と言われる材です。
そして、一番の特徴が「レイヤード」であること。
レイヤードとは、いわゆる合板(ごうはん)の事で、ベニア板のように薄くスライスした木材同士を重ねて圧着させた板のことを言います。
一般的にアコギは、この合板と一枚板の単板に分けられます。
下の図の、左が単板、右が合板です。
「Wood&Steel」より引用
テイラーでは300番台以降のシリーズは単板、100・200シリーズは合板と棲み分けされており、この違いが価格差にも現れています。
ちなみにテイラーでは「合板」という名称は用いず、一貫して「レイヤード」(Layered)と呼称しています。
その理由は、中間材にポプラを使用しているから。
一般的な合板のアコギ(エレアコ)は、中間材に木材ではない合成素材を使用しています。
テイラーでは、そうした合成素材ではなく、れっきとした木材(ポプラ)を使用していることをアピールするため「レイヤード」という言葉を使っています。
レイヤードは、単板と比べて剛性が高く、多少荒く扱っても壊れにくいのがメリットのひとつです。
と言っても、ギターを床に叩きつけるとかはダメですけど。
サウンド面に関しては、単板よりも鳴りが弱いという弱点があります。
ただし、人によっては合板の方がレスポンスが早く、煌めいて聴こえます。
つまり214ce Rosewoodは、ローズウッドの広いダイナミックレンジに加え、レイヤード由来の煌めきが融合したサウンドを持っているのです。
初心者向けのナローネック
214ce Rosewoodのネックは、テイラーでもスタンダードなマホガニーが採用されています。
「taylorguitars.com」より引用
マホガニーネックはアコギでは一般的な材として知られ、強度も問題ありません。
テイラーのエントリーモデル全般に共通しているのが、握りやすいナローネックを採用していることです。
テイラーのネックは大きく2種類に分けられており・・・
ナローネック | : |
42.9mm |
レギュラーネック | : |
44.5mm |
と、ナット幅に1.6mmほどの開きがあります。
ナット幅が狭い(ネックが細い)ことで、握りやすくコードチェンジがしやすいというメリットがあります。
これも214ce Rosewoodの人気のひとつになっています。
高品質なピックアップを搭載
テイラーの定番3桁シリーズには、全てES2(Expression System 2)という、独自のピックアップが搭載されています。

「HEARTBREAKER GUITRS」より引用
ピックアップとは、アコギ(エレアコ)の音を外部へ出力するためのもので、アンプに接続することで大音量が必要なステージなどで活躍します。
このピックアップには大きく2つの方式があり・・・
① ピエゾ方式 | : |
ギターの振動を拾い、電気信号に変換する方式 |
② マグネット方式 | : |
6本の磁石で音の振動を感知する方式 |
テイラーのES2は、①のピエゾ方式を採用していますが、一般的なそれとは一線を画すタイプです。
一般的にピエゾ方式は、ピエゾ素子(センサー)をブリッジサドルの下に配置していますが、テイラーではブリッジサドルの後方にセンサーを配置。
これにより、エレアコにありがちな“ピエゾ臭”と言われる、不自然な機械音ではなく、ギター本来の箱なりに限りなく近いサウンドを再現することに成功しました。
繰り返しになりますが、このES2は定番3桁シリーズ共通で搭載されています。
つまり214ce Rosewoodは、上位機種と同じピックアップを搭載した手頃なエレアコというわけです。
推奨弦はエリクサー
214ce Rosewoodの出荷時に張られている弦はエリクサー(Elixir)の「フォスファー・ブロンズ・ナノウェブ・ライト(Phosphor Bronze NANOWEB Light)」です。
数ある弦の中で、テイラーがエリクサーを推奨する理由は「長持ちするから」
一般的なメーカーの弦は1ヶ月ほどで錆び始めますが、エリクサーは、その2、3倍は持つと言われています。
その理由は、弦を極薄の膜でコーティングしているから。

「elixirstrings.jp」より引用
このコーティングが湿気や汗など、皮膚に付着した汚れから弦を守ることで、サウンドの劣化を防いでいるのです。
最近は他メーカーでもコーティング弦が発売されていますが、実は弦を丸ごとコーティングしているのはエリクサーだけです。
まるごとコーティングはエリクサーの特許技術なので、他メーカーは真似できないというわけです。
他メーカーは、巻弦の隙間はコーティングしていないので、その隙間から劣化が始まると言われています。
僕もいろんなメーカーの弦をテイラーに張って試してきましたが、今のところ、エリクサーで落ち着いています。
【Taylor】工場出荷時に張っている弦まとめ【Elixir / D’Addario】
214ce Rosewoodには別のモデルが存在
214ce Rosewoodには、もうひとつ、214ce-Koaというモデルが存在します。
主な違いは、サイド&バックにレイヤードのハワイアン・コア(Hawaiian Koa)が採用されていること。
ハワイアン・コアはその名の通りハワイが原産のトーンウッド。
ローズウッドと比べて、中音域の存在感が強いのが特徴です。
RosewoodとKoa、どちらがオススメか?
ハワイアン・コアは新品の状態から弾き込むと、甘いサウンドに変化する材です。
しかし、先述した通り200シリーズのサイド&バックはレイヤード。
したがってサウンドの変化が非常に少なく、ハワイアン・コア本来の楽しみ方は期待できません。
とは言え、それぞれ弾き比べると確実に「違い」はあります。
僕の結論としては「好みで選べばオーケー」です!
Taylorの214ce-Koaをレビュー!コア材のエントリーモデルは使えるか?
実は214ce Rosewoodにも3種類ある
ややこしい話しですが、214ce Rosewoodには・・・
- 214ce Rosewood
- 214ce Rosewood Plus
- 214ce Rosewood DLX
通常のモデルに加え、型番の後ろにPlus(プラス)やDLX(デラックス)といった記載のあるモデルも存在します。
違いを一言で説明すると、ボディのフィニッシュ(仕上げ)や装飾が豪華になったグレードアップVer.です。
関連記事では、3モデルの違いを詳しく解説しています。
Taylorの214ce Rosewoodは全部で3種類!違いは何?スペックから比較してみた!
314ceとの違い
214ce Rosewoodの購入を考えている人の中には、上位モデルである314ceと比較する人が多いです。
「taylorguitars.com」より引用
314ceは・・・
- アメリカ製
- オール単板ボディ
- V-Classブレーシングを採用
と、スペック面で214ce Rosewoodよりも優位性があることは否定できないです。
ただし、価格差もかなりあるので、詳しく知りたい方は関連記事を読んでみてください。
Taylorの214ceと314ceはどちらがおすすめ?そもそも違いは何?これを読めば解決!
価格について
それに伴い、下の価格表も書き換えましたので以前読まれた方は注意してください。
214ce Rosewoodに限らず、テイラーはどのモデルも市場価格は安定しており、店舗でもネットショップでも同じ価格で販売されています。
メーカー希望小売価格 | 実売参考価格 | |
214ce RW | ¥236,500 | ¥189,200 |
214ce Koa | ¥264,000 | ¥211,200 |
ローズウッドモデルよりもコアの方が売価が高いのは、やはり材そのものが高いからということになります。
22,000円という価格差を高いと感じるか、安いと感じるかは人それぞれですが、個人的には高いと思います。
中古も狙い目
中古市場の相場は約10〜13万円です。
214ce Rosewoodは初心者が2本目のギターを買うタイミングで売り払うことが多いので、在庫数も豊富。
程度の良いものであれば新品同様が手に入ることもあるので狙い目です。
まとめ
以上のことから214ce Rosewoodの特徴は以下の通りです。
- 初心者にも扱いやすいレイヤードボディ
- 握りやすいナローネック
- 上位モデルと同じピックアップを搭載
- 単板に比べて鳴りが弱い
先述した314ceなどの単板シリーズと比べると、鳴りの良さという面では劣る部分はありますが、正直、サウンドの好みは千差万別です。
特にピックアップにつなげて演奏する機会が多い人には、単板か合板かと言った違いはあまり関係ないので、ここも214ce Rosewoodの人気の理由なのだと思います。