テイラー(Taylor)の定番3桁シリーズ(300〜900番台)のサイド&バックに使用されているトーン・ウッドは大きく4種類に分かれています。
300/500 series | マホガニー系 |
600 series | メイプル系 |
700 series | コア系 |
400/800/900 series | ローズウッド系 |
今回取り上げるのは、マホガニー系の300シリーズです。
「taylorguitars.com」より引用
300シリーズのサイド&バックに使われているのはサペリ(Sapele)という材で、単板モデルでは売れ筋の314ceを抱える人気シリーズです。
その特徴は・・・
- 低音域から高音域までバランスの取れたサウンド
- 伸びのあるサスティーン
実勢売価も30万円代なので、最初から良質なギターを手に入れたいという初心者が候補に入れることが多いシリーズとなっています。
この記事では、300シリーズの特徴やスペックから、初心者に人気の秘密を紐解いていきます。
サペリとは
先述したように、300シリーズのサイド&バックにはサペリ(Sapele)という材が使用されています。
サペリはセンダン科の落葉広葉樹。
名前の由来は、アフリカ・ナイジェリアにあるサペリという都市からきています。
その名の通り、原産は主に西アフリカ。
同じくセンダン科のマホガニーによく似た音を持ち「サペリ・マホガニー」という異名もあるほど。
300シリーズの特徴
300シリーズは1998年に発表された、テイラーのラインナップでは中堅的なシリーズです。
シリーズ別のランクでは「定番」に位置し、その中でも最安値となっています。
共通するスペックは以下の通り。
300シリーズの共通スペック | |
トップ材 | シトカ・スプルース |
サイド&バック材 | サペリ |
ネック材 | トロピカル・マホガニー |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | V-Class |
ピックアップ | ES2 |
トップ材・サイド&バック材は共に単板となっています。
低音域から高音域までバランスの取れたサウンド
300シリーズのサイド&バックに使用されているサペリは、明るく歯切れの良いサウンドが特徴。
高音域の伸びがよく、4〜6弦の低音域のレスポスンスも早いです。
そのため、低音域から高音域までバランスの取れたギターを探している人に選ばれる傾向があります。
フィニッシュの違いが独自のサウンドを生んでいる
サイド&バック材の他、独自のサウンドを生む要因のひとつに300シリーズならではフィニッシュ(仕上げ)の違いがあります。
フィニッシュとは、ボディの製造過程で塗料を吹き付ける工程があり、仕上げの段階で行われることから、このように呼ばれています。
フィニッシュを行う理由は、ギター表面の保護とサウンドの安定化です。
テイラーでは、400以降のシリーズはボディ全面をグロスで仕上げています。
一方、300シリーズはトップはグロス仕上げ、サイド&バックはサテン仕上げとなっています。
グロスはテイラーではスタンダードな仕上げで、一般的にはポリエステル塗装と呼ばれています。
サテンはポリウレタンを吹き付けたツヤ消し仕上げで、グロスよりも塗膜が薄いのが特徴です。
製造コストはグロスよりもサテンが安いため、300シリーズにはサイド&バックにサテンが採用されています。
しかし、これにより300シリーズは他のシリーズにはない鳴りを実現させているとも言えます。
伸びのあるサスティーン
サスティーンとは、音を鳴らして(弦を弾いて)から、聴こえなくなるまでの長さのこと。
テイラーのギターは、このサスティーンが長いことで知られています。
それを実現しているのがV-Classブレーシングです。
「Taylor公式HP」より引用
ブレーシングとは「力木」(ちからぎ)と呼ばれる、ボディの強度を上げるためにギターの内側に張られた棒状の材のこと。
V-Classブレーシングは上の画像の通り、メインの骨組みがV(ヴイ)状に張られています。
これは2018年にテイラーが独自に開発した構造です。
従来、アコギのブレーシングは下の画像のようにメインの骨組みがX(エックス)状に張られている、Xブレーシングが一般的でした。
「NEW ATLAS」より引用
これは、マーチン(Martin)社が100年以上前に考案したものがベースとなっており、ほとんどのギターメーカーが採用しています。
Xブレーシングはギターの強度を高める役目を果たしていますが、材の振動を抑制してしまうという課題がありました。
そのため犠牲になっていたのがサスティーンです。
V-ClassブレーシングはギターのトップにXブレーシングとは異なる振動をさせ、硬さと同時に柔軟性を向上させることで伸びのあるサスティーンを実現しました。
2018年以降、300番台以降のシリーズには全て、このV-Classブレーシングが採用されています。
さらに、V-Classブレーシングになったことで、コンパクトなボディでも音量を稼ぐことができるようになったことも特筆すべき点です。
300シリーズのランナップ
2022年8月現在、300シリーズには5つのモデルがラインナップされています。
- 312ce
- 312ce 12Fret
- 352ce
- 314ce
- 317e
基本的な違いはボディ・シェイプですが、細かい部分に違いがあります。
312ce |
312ceは、グランド・コンサート(Grand Concert)、通称GCというボディ・シェイプ。
マーチンの00(ダブルオー)に近いサイズ感で、女性や小柄な男性に人気の形状です。
300シリーズのラインナップでは一番小さく、ボディの厚みも浅めなので、より身体に引き寄せて弾くことができます。
演奏スタイルでは、特にフィンガー・ピッキングする人に選ばれる傾向があります。
Taylorの312ceをレビュー!フィンガーピッキング向けの売れ筋モデルを徹底解剖
312ce 12Fret |
こちらは312ceの12フレットジョイントのモデルです。
通常のアコギは、ネックとボディの境目が14フレット目にあります。
このモデルは画像を見てもらうと分かる通り、12フレット目にあります。
その分、ネックがショートしているので、体格の小さな人には弾きやすいモデルとなっています。
352ce |
352ceは12弦ギターです。
ボディは312ceと同じGCが採用されています。
テイラーの12弦ギターの特徴はブリッジにあります。
「Taylor公式HP」より引用
一般的な12弦ギターはブリッジピンの数が弦の本数分(12個)あるのに対し、テイラーは半数の6個しかありません。
1つのピンで2本の弦を固定させるダブルマウントを採用し、すっきりとした印象になっています。
314ce |
314ceは、テイラーで一番人気のグランド・オーディトリアム(Grand Auditorium)、通称GAというボディ・シェイプです。
特徴は、大き過ぎず小さ過ぎずフラットピックでのストロークから、フィンガーピッキングまで幅広いプレイスタイルに対応した万能型。
テイラーを初めて買う人は、とりあえずこのシェイプを買っておけば間違いないです。
Taylorの314ceをレビュー!深堀りして見えた高評価の秘密
317e |
317eは2019年に登場したグランド・パシフィック(Grand Pacific)、通称GPというボディ形状です。
GPはアコギの定番シェイプであるドレッドノートのテイラー版とも言える形状。
元々、テイラーは1974年の創業時から他メーカーと同じくマーチンのドレッドノートのコピーモデルを製造してきましたが、2019年にこのGPが新たなドレッドノートとして定番化。
倍音が効いていて、低音域と高音域が前面に出てくるボリュームのあるサウンドになっています。
尚、317eにはピックアップのないモデル(317)もあります。
価格について
それに伴い、下の価格表も書き換えましたので以前読まれた方は注意してください。
冒頭でも言及した通り、300シリーズは定番3桁シリーズでも最安値となっており、初心者にも選ばれる傾向があります。
メーカー希望小売価格 | 実勢売価 | |
312ce | ¥478,500 | ¥382,800 |
312ce 12Fret | ¥478,500 | ¥382,800 |
352ce | ¥539,000 | ¥431,200 |
314ce | ¥478,500 | ¥382,800 |
317 | ¥418,000 | ¥334,400 |
317e | ¥478,500 | ¥382,800 |
テイラーは販売価格が安定しており、全国的に一律の価格設定となっていますが、小さな打痕や引っかき傷のある在庫だと新品特価で売り出される時があります。
また、中古の販売相場は、個体の状態によりますが15〜20万円です。
中古の場合は、ブレーシングがV-Classか確認してから購入してください。
エントリーモデル「214ce」との違い
300シリーズと同じく、初心者に人気があるのがひとつ下の200シリーズ。
中でもGA(グランド・オーディトリアム)の314ceと214ceはよく比較されます。
見た目はそっくりですが、弾き心地やサウンドは全く違う別物です。
Taylorの214ceと314ceはどちらがおすすめ?そもそも違いは何?これを読めば解決!
まとめ
以上のことから300シリーズの特徴をまとめると・・・
- 低音域から高音域までバランスの取れたサウンド
- 伸びのあるサスティーン
定番3桁の単板シリーズでは最安値ですが、そのサウンドは他のシリーズにはない魅力があります。
装飾もシンプルなので、プレーンな見た目のギターを探している人にもおすすめできるシリーズです。