Taylorの312ceをレビュー!フィンガーピッキング向けの売れ筋モデルを徹底解剖

テイラー(Taylor)ギターには6つのオリジナル・シェイプがあり、特にフィンガー・ピッキングをする人に人気なのが、グランド・コンサートという形状。

その中でも売れ筋なのが、今回紹介する「312ce」です。

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Image : Taylor

単板モデルでは最安値ですが、サペリという他メーカーではあまり使われない材を使用した独自のサウンドがプロ・アマ問わず支持されています。

この記事では、312ceの基本スペックからその人気の秘密を深堀りしていきます。

 312ceの基本スペック

下の図は、テイラーが展開するシリーズをグレードごとに分類したピラミッドです。

312ceの300シリーズは「定番」に位置し、その中でも比較的手に取りやすい価格が魅力のシリーズです。

312ce

ボディ・シェイプ  グランド・コンサート
トップ材  シトカ・スプルース
サイド&バック材  サペリ
ネック材  トロピカル・マホガニー
フレットボード材  エボニー
ブレーシング  V-Class
ピックアップ  ES2

上記の基本スペックから読み取れる312ceの特徴は以下のとおり。

小ぶりなボディ・シェイプ

ボディ・シェイプとは、いわゆるボディの形状のこと。

記事の冒頭でも言及しましたが、テイラーには6つのボディ・シェイプがあり、312ceはグランド・コンサート(Grand Concert)、通称GCという形状です。

GCはテイラーのボディ・シェイプでは2番目に小さく、ボディの厚みも薄く作られています。

その分、身体に引き寄せて弾くことができるので、小柄な体型の女性や男性に選ばれる形状です。

演奏スタイルでは、特にフィンガー・ピッキングをする人に人気があります。

中音域が豊かなサペリ材

ボディのトップに使われているのは、シトカ・スプルース(Sitka Spruce)という材。

taylorguitars.com」より引用

アコギの定番材で、テイラーでもほとんどのモデルで使用されています。

サイド&バックは、サペリ(Sapele)という材です。

taylorguitars.com」より引用

サペリはセンダン科の落葉広葉樹。

名前の由来は、アフリカ・ナイジェリアにあるサペリという都市からきています。

その名の通り、原産は主に西アフリカで、同じくセンダン科のマホガニーによく似た音を持ちます。

明るく歯切れの良いサウンドが特徴で、特に中音域が豊か。

高音域の伸びもよく、低音域のレスポンスも早いです。

そのためバランスの取れたサウンドを求めている人に選ばれる傾向があります。

テイラー独自のV-Classブレーシング

ブレーシングとは、ギターのボディ内部に張られた棒状の材のこと。

taylorguitars.jp」より引用

テイラーのブレーシングはメインの骨組みがV(ヴイ)状に張られた「V-Classブレーシング」が採用されています。

V-Classはテイラーが2018年に開発したオリジナルのブレーシングで、一般的なブレーシングとは形状が異なります。

一般的なブレーシングは、メインの骨組みがX(エックス)状に張られた「Xブレーシング」です。

NEW ATLAS」より引用

Xブレーシングは、マーチン(Martin)社が100年以上前に開発し、現在は多くのギターメーカーが採用しています。

XブレーシングとV-Classブレーシングを並べてみると、その構造の違いがよく分かります。

V-ClassブレーシングはXブレーシングと比べて、音の分離やサスティーンが強化されているのが特徴。

サスティーン
音を鳴らして(弦を弾いて)から、聴こえなくなるまでの長さのこと。音の持続性を表す言葉。

さらに、コンパクトなボディでも音量が稼げることも特筆すべき点です。

弾きやすいナット幅

ナット幅とは、ギターのヘッドと指板の間にあるパーツを「ナット」と呼び、その幅のことを指します。

テイラーではシリーズによって2種類のナット幅があり・・・

42.9mm :

ナローネック

44.5mm :

レギュラーネック

312ceはナット幅が44.5mmのレギュラーネックを採用しています。

レギュラーネックとナローネックのナット幅の差は、わずか1.6mmですが、握った感覚はまったく違います。

ナローネックは下位シリーズ(200番台以下)で採用されており、初心者が握りやすくコードチェンジしやすいというメリットがあります。

一方のレギュラーネックは、300番台以降の上位シリーズで採用されている定番ネック。

特にフィンガー・ピッキングをする人は、頻繁に押弦するので広めの指板を好みます。

そもそもテイラーのネックは他メーカーと比べて薄めに作られているので、44.5mmでも押弦しやすいという特徴があります。

高品質なピックアップを搭載

312ceにはES2(Expression System 2)というテイラー独自のピックアップが搭載されています。

HEARTBREAKER GUITARS」より引用

ピックアップとは、アコギ(エレアコ)の音を外部へ出力するためのもので、アンプに接続することで大音量が必要なステージなどで活躍します。

このピックアップには大きく2つの方式があり・・・

① ピエゾ方式 :

ギターの振動を拾い、電気信号に変換する方式。

② マグネット方式 :

6本の磁石で各弦の振動を感知する方式。

テイラーのES2は、①のピエゾ方式を採用していますが、一般的なそれとは一線を画しています。

一般的にピエゾ方式は、ピエゾ素子(センサー)をブリッジサドルの下に配置していますが、テイラーではブリッジサドルの後方(下図)に配置。

これにより、エレアコにありがちな“ピエゾ臭”と言われる不自然な機械音ではなく、ギター本来の箱鳴りに限りなく近いサウンドを再現してくれます。

 312ceをレビュー

ここからは、僕が実際に試奏してみての評価を述べていきます。

まず、結論としては・・・

他メーカーでも珍しいサペリのサウンドが魅力。はじめての単板モデルとしては買いの1本。

定番3桁シリーズの単板モデルでは最安値で、かつ売れ筋の300番台ということもあり、サウンドと価格のバランスをうまく取っているモデルです。

これまで解説してきた特徴の他、テイラーでも独自のサウンドを生み出している秘密が、他のシリーズにはない独自の工法。

 2種類のフィニッシュで独自のサウンド

フィニッシュとは、ボディの製造過程で塗料を吹き付ける工程のこと。

taylorblog」より引用

フィニッシュを行う理由はギター表面の保護サウンドの安定化です。

312ceではボディの場所によって2種類の塗料を使い分けています。

トップ :

グロス

サイド&バック :

サテン

トップに使われてるグロスは、テイラーではスタンダードな仕上げ。

ポリエステルを吹き付けた、湿気に強いコーティングです。

サイド&バックに使われているサテンは、ポリウレタンを用いたコーティング。

サラサラとしたさわり心地が特徴です。

実は製造コストの面では、グロスの方が高く、サテンは主にコストダウンのために採用されます。

312ceも価格を抑えるためにサイド&バックにサテンを採用していると推測できますが・・・

実はこれが独特のサウンドを生み出す要因でもあります。

というのも、グロスは耐性が高い分、材の振動をおさえてしまいます。

サテンは塗膜が薄いため、グロスよりも鳴りやすいというのが特徴。

312ceは2種類の特性が融合した独自のサウンドを持っているということです。

 推奨弦はエリクサー

312ceの工場出荷時に張られている弦はエリクサー(Elixir)の「フォスファー・ブロンズ・ナノウェブ・ライト(Phosphor Bronze NANOWEB Light)」です。

数ある弦の中でテイラーがエリクサーを推奨する理由は「長持ちするから」

一般的なメーカーの弦は1ヶ月ほどで錆び始めますが、エリクサーは、その2〜3倍は持つといわれています。

その理由は、弦を極薄の膜でコーティングしているから。

elixirstrings.jp」より引用

このコーティングが湿気や汗など、皮膚に付着した汚れから弦を守ることで、サウンドの劣化を防いでいます。

最近は他メーカーでもコーティング弦が発売されていますが、実は弦をまるごとコーティングしているのはエリクサーだけです。

まるごとコーティングはエリクサーの特許技術なので、他メーカーは真似できないというわけです。

他メーカーは、巻弦の隙間はコーティングしていないので、その隙間から劣化が始まると言われています。

僕もいろんなメーカーの弦をテイラーに張って試してきましたが、今のところエリクサーで落ち着いています。

【Taylor】工場出荷時に張っている弦まとめ【Elixir / D’Addario】

 価格について

312ceのメーカー希望小売価格、実勢売価は以下のとおりです。

  メーカー希望小売価格 実勢売価
312ce ¥478,500 ¥382,800

テイラーは販売価格が比較的安定しており、全国的に一律の価格設定となっています。

ただ、まれに特価で売り出されることがあるので、急ぎでない人はときどき価格をチェックすることをおすすめします。

 中古も狙い目

312ceの中古相場は、個体の状態にもよりますが約15〜25万円です。

中古の場合、2018年以前のモデルはV-ClassブレーシングではなくXブレーシングとなっていますので注意が必要です。

ちなみに、V-ClassとXはナットの色で見分けることが可能。

V-Classは「黒」Xは「白」です。

楽天市場でも312ceの中古が探せます

 まとめ

以上のことから312ceの特徴をおさらいすると・・・

  •  小ぶりなボディ・シェイプ
  •  中音域が豊かなサペリ材
  •  テイラー独自のV-Classブレーシング
  •  弾きやすいナット幅
  •  高品質なピックアップを搭載
  •  2種類のフィニッシュで独自のサウンド

オール単板モデルとしては最安値になりますが、スペック的には手抜きすることなく、テイラーの技術を詰め込んだ仕様となっています。

サウンド面でも独自の立ち位置にあるので、オリジナリティを出したい人におすすめできるモデルです。

この記事がギター選びの参考になれば幸いです。

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