Martinの対抗馬?Taylorの400シリーズを徹底レビュー!【Rosewood】

テイラー(Taylor)ギターの定番3桁シリーズ(300〜900番台)のサイド&バックとして使用されているトーンウッドは大きく4種類に分かれています。

300/500 series マホガニー系
600 series メイプル系
700 series コア系
400/800/900 series ローズウッド系

今回取り上げるのは、アコースティックギターの定番材であるローズウッド系の中でも手頃な400シリーズです。

taylorguitars.com」より引用

テイラーの400シリーズと言えば長らくオヴァンコール(Ovangkol)という材を採用していましたが、2021年に生産中止になりました。

ローズウッドの400シリーズは2016年に発表され、日本での正式名称を「400 Rosewood Series」と言います。

国内では通常の400シリーズと区別されていますが、本国・アメリカではローズウッドも400シリーズの一部として扱っています。

したがって、本記事でもアメリカに準じて400シリーズとします。

400シリーズの特徴

400シリーズの歴史は1991年からはじまります。

1992年、Taylorのカタログに初登場したファーストモデルの410。

発売当初、サイド&バック材はマホガニー(Mahogany)でした。

その後オヴァンコール(Ovangkol)に変わり、2016年からは並行してローズウッドが製造されるようになります。

そして2021年にオヴァンコールも製造中止となり、ローズウッドのみの製造となりました。

当初はエントリーシリーズという立ち位置でしたが、時代と共に格上げされ、現在はマーチン(Martin)のD-28や00-28の対抗馬としての役回りになっています。

テイラーのシリーズ別のランクでは「定番」に位置しますが、後述するモデルのラインナップは2機種と他シリーズよりも少なめ。

そんな400シリーズの共通スペックは以下の通りです。

400シリーズの共通スペック
トップ材  シトカ・スプルース
サイド&バック材  インディアン・ローズウッド
ネック材  トロピカル・マホガニー
フレットボード材  エボニー
ブレーシング  V-Class
ピックアップ  ES2

上記スペックから読み取れる400シリーズの特徴は以下の通りです。

ローズウッドによる豊かなサウンド

インディアン・ローズウッド(Indian Rosewood)は、その名の通り、インド東部が原産のトーンウッド。

切ったばかりの材はバラの様な香りがすることから、その名が付けられました。

taylorguitars.com」より引用

アコースティックギターでは王道とも言える材で、他メーカーでもフラッグシップモデルは軒並みインディアン・ローズウッドを採用しています。

そのサウンドは、暖かみや深みを感じられる太い低音域に、きらめく高音域、伸びのあるサスティーンが特徴。

一方、中音域はやや抑え気味なので歌モノに最適と言われています。

他のシリーズとの違い

400シリーズと同様に、インディアン・ローズウッドをバック&サイド材として採用しているシリーズに700/800/900シリーズがあります。

これらは同じ材ですがグレードが違います。

グレードとは一言で言えば“見た目の美しさ”です。

400シリーズ(414ce-R)と比べて800シリーズ(814ce)の方が木目が濃く・ハッキリしています。

インディアン・ローズウッドは和名を「紫檀」(したん)と言い、より紫に見えるものほど材としての価値が上がります。

各シリーズのインディアン・ローズウッドのグレードは以下の通り。

400 Series :

グレードなし

800 Series :

A(シングルエー)

900 Series : AA(ダルブルエー)

グレードの格付けには明確な線引があるわけではなく、テイラー社のバイヤーの主観で選ばれます。

400シリーズは800/900の選考に漏れた材が使われているということになります。

実はこれが価格差を生む最大の要因でもあるのです。

ただし・・・

見た目が美しい = 鳴りがいい

というわけではありません。

あくまで見た目の違いです。

そういう意味では400シリーズはコストパフォーマンスに優れたシリーズということが言えます。

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伸びのあるサスティーン

サスティーンとは、音を鳴らして(弦を弾いて)から聴こえなくなるまでの長さのこと。

テイラーのギターは、このサスティーンが長いことで知られています。

それを実現しているのがV-Classブレーシングです。

Taylor公式HP」より引用

ブレーシングとは「力木」(ちからぎ)と呼ばれる、ボディの強度を上げるためにギターの内側に張られた棒状の材のこと。

V-Classブレーシングは上の画像の通り、メインの骨組みがV(ヴイ)状に張られています。

これは2018年にテイラーが独自に開発した構造です。

従来、アコギのブレーシングは下の画像のようにメインの骨組みがX(エックス)状に張られている、Xブレーシングが一般的です。

NEW ATLAS」より引用

これはマーチン社が100年以上前に考案したものがベースとなっており、ほとんどのギターメーカーが採用しています。

Xブレーシングはギターの強度を高める役目を果たしていますが、材の振動を抑制してしまうという課題があります。

そのために犠牲になっていたのが、先述したサスティーンです。

XブレーシングとV-Classブレーシングの概念図

V-ClassブレーシングはギターのトップにXブレーシングとは異なる振動をさせ、硬さと同時に柔軟性を向上させることで伸びのあるサスティーンを実現しました。

2018年以降、300番台以降のシリーズには全て、このV-Classブレーシングが採用されています。

さらにV-Classブレーシングになったことで、コンパクトなボディでも音量を稼ぐことができるようになったことも特筆すべき点です。

400シリーズのラインナップ

2022年8月現在、400シリーズには2モデルがラインナップされています。

  1.  412ce Rosewood
  2.  414ce Rosewood

主な違いはボディ・シェイプ、いわゆるボディの形状です。

テイラーには6つのオリジナル・シェイプがあり、400シリーズでランナップされているのは「GC」と「GA」です。

以下で各シェイプの特徴を簡単に紹介します。

グランド・コンサート(GC)

対象モデル:412ce Rosewood

グランド・コンサート(Grand Concert)、通称GCはマーチンの00(ダブルオー)に近いサイズ感で、女性や小柄な男性に人気の形状です。

400シリーズのランナップでは一番小さく、ボディの厚みも浅いので、より身体に引き寄せて弾くことができます。

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グランド・オーディトリアム(GA)

対象モデル:414ce Rosewood

グランド・オーディトリアム(Grand Auditorium)、通称GAはテイラーで一番人気のシェイプ。

1994年に発表されたテイラー初のオリジナル・シェイプでもあります。

特徴は、大きすぎず小さすぎずフラットピックでのストロークから、フィンガーピッキングまで幅広いプレイスタイルに対応した万能型。

テイラーを初めて買う人は、とりあえずこのシェイプを買っておけば間違いないです。

ちなみにサイド&バックにインディアン・ローズウッドを採用したモデルでは414ce Rosewoodが一番売れているモデルです。

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価格について

注意
2022年7月1日より価格改定で値上げされました。
それに伴い、下の価格表も書き換えましたので以前読まれた方は注意してください。

冒頭でも言及した通り、400シリーズはサイド&バック材にインディアン・ローズウッドを採用したシリーズでは最安値となっています。

※すべて税込み
  メーカー希望小売価格 実勢売価
412ce-R ¥649,000 ¥519,200
414ce-R ¥649,000 ¥519,200

テイラーは販売価格が安定しており、全国的に一律の価格設定となっていますが、小さな打痕や引っかき傷のある在庫だと新品特価で売り出される時があります。

また、中古の販売相場は、個体の状態によりますが25〜30万円です。

中古の場合は、ブレーシングがV-Classか確認してから購入してください。

まとめ

以上のことから400シリーズの特徴をおさらいすると・・・

  • ローズウッドによる豊かなサウンド
  • 伸びのあるサスティーン

400シリーズはスペック面・価格面で見る限り、明らかにマーチンを意識していることが分かります。

一方でサウンド面はマーチンに寄せるのではなく、テイラーらしいスッキリとしたトーンです。

「鳴りすぎるギターは苦手」という人には是非、400シリーズを手にとってもらいたいと思います。

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