Taylorの412ce Rosewoodをレビュー!フィンガースタイルに評判の小ぶりなギター

ソロギターなどフィンガーピッキングをする人に人気のギターといえば、マーチン(Martin)の「00-28」が知られた存在です。

スプルース×ローズウッドというアコギの定番材を使用し、ドレッドノートでは大きすぎるという女性にも弾き語り用として愛用する人がいます。

各ギターメーカーも、コピーモデルを量産していますが・・・

テイラー(Taylor)の場合、同じ様な立ち位置のモデルと言えば「412ce Rosewood」です。

412ceR-Gallery 17
412ceR-Gallery 2
412ceR-Gallery 16
412ceR-Gallery 6
412ceR-Gallery 7
412ceR-Gallery 8
412ceR-Gallery 9
412ceR-Gallery 12
previous arrow
next arrow

Image : Taylor

材の構成・ボディサイズ・価格、どれを取っても限りなく00-28に近い、競合モデルと言えます。

テイラーでは、200/400/800/900シリーズがローズウッド・モデルですが、412ce Rosewoodはオール単板としては最安値。

発売は2016年と、比較的あたらしいモデルですが、登場以来00-28と比較されるほど人気となりました。

この記事では、そんな412ce Rosewoodの基本スペックから、テイラーならではのテクノロジーを駆使した、弾きやすさやサウンドづくりについて深堀りしていきます。

 412ce Rosewoodの基本スペック

下の図は、テイラーが展開するシリーズをグレードごとに分類したピラミッドです。

412ce Rosewoodの400シリーズは「定番」に位置し、初心者のステップアップの2本目・3本目のギターとして選ばれる傾向があります。

412ce Rosewood

ボディ・シェイプ  グランド・コンサート
トップ材  シトカ・スプルース
サイド&バック材  インディアン・ローズウッド
ネック材  トロピカル・マホガニー
フレットボード材  エボニー
ブレーシング  V-Class
ピックアップ  ES2

上記の基本スペックから読み取れる412ce Rosewoodの特徴は以下のとおりです。

小ぶりなボディ・シェイプを採用

ボディ・シェイプとは、いわゆるボディの形状のこと。

テイラーには6つのボディ・シェイプがあり、412ce Rosewoodグランド・コンサート、通称GCという形状です。

GCはテイラーのボディ・シェイプでは2番目に小さく、ボディの厚みも薄く作られています。

その分、身体に引き寄せて弾くことができるので、小柄な女性や男性に選ばれる形状です。

演奏スタイルでは、特にフィンガー・ピッキングをするひとに人気があります。

アコギの定番「スプルース×ローズウッド」

トップに使われているのは、シトカ・スプルース(Sitka Spuruce)という材。

taylorguitars.com」より引用

アコギの定番材で、テイラーでもほとんどのモデルで使用されています。

サイド&バックもアコギの定番、インディアン・ローズウッド(Indian Rosewood)という材。

taylorguitars.com」より引用

インディアン・ローズウッドは、インド東部が原産のトーンウッド。

トーンウッド
楽器に使用される木材の総称。

切ったばかりの材はバラの様な香りがすることから、その名が付けられました。

そのサウンドは、低音域と高音域が前面に出て、中音域はやや控えめ。

そのため弾き語りなどの「歌モノに最適」と言われる材です。

テイラー独自のV-Classブレーシング

ブレーシングとは、ギターのボディ内部に張られた棒状の材のこと。

taylorguitars.jp」より引用

テイラーのブレーシングは、メインの骨格がV(ヴイ)状に張られた「V-Classブレーシング」が採用されています。

V-Classはテイラーが2018年に開発したオリジナルのブレーシングで、一般的なブレーシングの形状とは異なります。

一般的なブレーシングは、メインの骨格がV(エックス)状に張られた「Xブレーシング」です。

NEW ATLAS」より引用

Xブレーシングは、マーチンが100年以上前に開発し、現在は多くのメーカーが採用しています。

XブレーシングとV-Classブレーシングを並べてみると、その構造の違いは一目瞭然。

V-ClassブレーシングはXブレーシングと比べて、音の分離やサスティーンが長いのが特徴。

サスティーン
音を鳴らして(弦を弾いて)から聴こえなくなるまでの長さのこと。音の持続性を表す言葉。

さらにV-Classブレーシングは、コンパクトなボディでも音量が稼げることも特筆すべき点です。

弾きやすいナット幅

ナット幅とは、ギターのヘッドと指板の間にあるパーツを「ナット」と呼び、その幅のことを指します。

テイラーではシリーズによって2種類のナット幅があり・・・

42.9mm :

ナローネック

44.5mm :

レギュラーネック

412ce Rosewoodはナット幅44.5mmのレギュラーネックを採用しています。

レギュラーネックとナローネックのナット幅の差は、わずか1.6mmですが、握った感覚は全く違います。

ナローネックは下位シリーズ(200番台以下)で採用されており、初心者が握りやすくコードチェンジしやすいというメリットがあります。

レギュラーネックは300番台以降の上位シリーズで採用されている定番ネック。

特にフィンガー・ピッキングをする人は、頻繁に押弦するので広めの指板を好みます。

そもそもテイラーのネックは他メーカーと比べて薄めに作られているので、44.5mmでも押弦しやすいという特徴があります。

高品質なピックアップを搭載

テイラーの定番3桁シリーズには、すべてES2(Expression System 2)という独自のピックアップが搭載されています。

HEARTBREAKER GUITARS」より引用

ピックアップとは、アコギ(エレアコ)の音を外部へ出力するためのもので、アンプに接続することで大音量が必要なステージなどで活躍します。

このピックアップには大きく2つの方式があり・・・

① ピエゾ方式 :

ギターの振動を拾い、電気信号に変換する方式

② マグネット方式 :

6本の磁石で音の振動を感知する方式

テイラーのES2は、①のピエゾ方式を採用していますが、一般的なそれとは一線を画しています。

一般的にピエゾ方式は、ピエゾ素子(センサー)をブリッジサドルの下に配置していますが、テイラーではブリッジサドルの後方に配置。

これにより、エレアコにありがちな“ピエゾ臭”と言われる不自然な機械音ではなく、ギター本来の箱鳴りに限りなく近いサウンドを再現してくれます。

 412ce Rosewoodをレビュー

ここからは、僕が実際に試奏してみての評価を述べていきます。

taylorguitars.com」より引用

まず、結論としては・・・

材の構成もサウンドも定番。生音は面白みに欠けるけどPUサウンドは

テイラーではスタンダードなスペックなので「はじめての単板モデル」としては買いの1本です。

一方で、他のモデルと比べると、やや物足りないところがあるのも事実。

そんな412ce Rosewoodの特徴をピックアップしてみました。

材のグレードは「なし」

材のグレードとは“見た目の美しさ”を指すのですが・・・

412ce Rosewoodの木目はいたって普通です。

同じローズウッドの812ceと比較すると・・・

812ceの方が木目がハッキリしています。

実はテイラーでは、ローズウッドをシリーズごとにグレード分けしており・・・

400 Series :

なし

800 Series :

A(シングルエー)

900 Series : AA(ダブルエー)

412ce Rosewoodのグレードは「なし」です。

ちなみに・・・

見た目が美しい = 鳴りが良い

というわけではないので、見た目を重視しない人には412ce Rosewoodはコスパに優れたモデルと言えます。

フィニッシュは6.0milなので“鳴り”はそこそこ

フィニッシュとは、ギターのボディを製造する過程で塗料を吹き付ける工程のこと。

TaylorBlog」より引用

フィニッシュもシリーズによって塗膜の厚さが異なり・・・

400 Series :

6.0mil

800 Series :

4.5mil

900 Series : 3.5mil

412ce Rosewoodの塗膜の厚さは6.0mil(ミル)。

メートル法に直すと、0.1524mmです。

フィニッシュは塗膜が厚いほど材の振動を抑えてしまうので、800/900シリーズと比較すると、412ce Rosewoodの鳴りはやや控えめという印象・・・。

ただし、PUにつなげて演奏する人の中には「800/900は鳴りすぎるので、あえて400を選ぶ」という意見もあります。

僕も、PUサウンドに関しては412ce Rosewoodの方が低音がすっきりとして耳触りが良い印象です。

 推奨弦はエリクサー

412ce Rosewoodの工場出荷時に張られている弦はエリクサー(Elixir)の「フォスファー・ブロンズ・ナノウェブ・ライト(Phosphor Bronze NANOWEB Light)」です。

数ある弦の中でテイラーがエリクサーを推奨する理由は「長持ちするから」

一般的なメーカーの弦は1ヶ月ほどで錆び始めますが、エリクサーは、その2〜3倍は持つと言われています。

その理由は、弦を極薄の膜でコーティングしているから。

elixirstrings.jp」より引用

このコーティングが湿気や汗など、皮膚に付着した汚れから弦を守ることで、サウンドの劣化を防いでいます。

最近は他メーカーでもコーティング弦が発売されていますが、実は弦をまるごとコーティングしているのはエリクサーだけです。

まるごとコーティングはエリクサーの特許技術なので、他メーカーは真似できないというわけです。

他メーカーは、巻弦の隙間はコーティングしていないので、その隙間から劣化が始まると言われています。

僕もいろんなメーカーの弦をテイラーに張って試してきましたが、今のところエリクサーで落ち着いています。

【Taylor】工場出荷時に張っている弦まとめ【Elixir / D’Addario】

 価格について

412ce Rosewoodのメーカー希望小売価格、実勢売価は以下の通りです。

※すべて税込み
  メーカー希望小売価格 実勢売価
412ce RW ¥569,800 ¥455,840

テイラーは販売価格が比較的安定しており、全国的に一律の価格設定となっています。

ただ、まれに特価で売り出されることがあるので、急ぎでない人はときどき価格をチェックすることをおすすめします。

 中古も狙い目

412ce Rosewoodの中古相場は、個体の状態にもよりますが約20〜25万円です。

中古の場合、2018年以前のモデルはV-ClassではなくXブレーシングになっていますので注意が必要です。

ちなみに、V-ClassとXは、ナットの色で見分けることが可能。

V-Classは「黒」Xは「白」です。

 競合は00-28

記事の冒頭でも言及しましたが、412ce Rosewoodと同価格帯のモデルと言えば、マーチンの「00-28」です。

メーカー希望小売価格は48万円。

材構成やボディサイズは似たスペックですが、ブレーシング形状が違うのでサウンドの印象も随分と変わります。

音の好みに関しては千差万別なので、どちらも試奏してみて選ぶといいかと思います。

 まとめ

412ce Rosewoodはアコースティックギターの標準的なスペックで、他のモデルを選ぶ際の基準となる存在でもあります。

同じ材を使った812ceや912ceのような上位モデルは、見た目もサウンドも更に上をいくグレードですが、気軽に弾けるという意味では412ce Rosewoodに軍配が上がります。

それは標準的であるからこそ、弾いても聴いても安心感があるから。

ここも412ce Rosewoodが選ばれる理由のひとつと言えます。

この記事がギター選びの参考になれば幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です