アコースティックギターで定番の材の組み合わせと言えば、シトカ・スプルース×インディアン・ローズウッド。
テイラー(Taylor)では200/400/800/900シリーズがローズウッド系ですが、サウンドと価格の両面で評価の高いモデルが「414ce Rosewood」です。
Image:Taylor
414ce Rosewoodはローズウッドの単板シリーズでは最安値ですが、2016年の登場から一気に売れ筋に躍り出た人気モデルとして知られています。
この記事では、そんな414ce Rosewoodについて深堀りしていきます。
414ce Rosewoodの基本スペック
下の図は、テイラーのシリーズをグレードごとに分類したピラミッドです。
414ce Rosewoodの400シリーズは「定番」に位置し、2本目・3本目のギターとして選ばれる傾向があります。
414ce Rosewood |
ボディ・シェイプ | グランド・オーディトリアム |
トップ材 | シトカ・スプルース |
サイド&バック材 | インディアン・ローズウッド |
ネック材 | トロピカル・マホガニー |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | V-Class |
ピックアップ | ES2 |
一番人気のGAシェイプ
414ce Rosewoodのボディ・シェイプは、テイラーでは定番のグランド・オーディトリアム、通称GAという形状。
GAは1994年に発表されたテイラー初のオリジナル・シェイプ。
大きすぎず、小さすぎず、フィンガー・ピッキングからフラットピックでのストロークまで幅広いプレイに対応した万能型です。
アコギの定番「スプルース×ローズウッド」
トップ材に使われているのはシトカ・スプルース(Sitka Spruce)という材。
「taylorguitars.com」より引用
アコギでは定番の材で、テイラーではほとんどのモデルで使用されています。
サイド&バックもアコギの定番、インディアン・ローズウッド(Indian Rosewood)という材です。
「taylorguitars.com」より引用
インディアン・ローズウッドは、インド東部が原産のトーンウッド。
切ったばかりの材はバラのような香りがすることから、その名が付けられました。
そのサウンドは、低音域と高音域が前面に出て、中音域はやや控えめ。
そのため「歌モノに最適」と言われる材です。
テイラー独自のV-Classブレーシング
ブレーシングとは、ギターのボディ内部に張られた棒状の材のこと。
テイラーのブレーシングはメインの骨組みがV(ヴイ)状に張られた「V-Classブレーシング」が採用されています。
「taylorguitar.jp」より引用
V-Classはテイラーが2018年に開発したオリジナルのブレーシングで、一般的なブレーシングと形状が異なります。
一般的なブレーシングは、メインの骨組みがX(エックス)状に張られた「Xブレーシング」です。
「NEW ATLAS」より引用
Xブレーシングは、マーチン(Martin)が100年以上前に開発し、現在は多くのメーカーが採用しています。
XブレーシングとV-Classブレーシングを並べてみると、その構造の違いは一目瞭然。
V-ClassブレーシングはXブレーシングと比べて、音の分離やサスティーンが向上しています。
材の組み合わせは同じでも、このブレーシングが違うことで、テイラーらしいサウンドを実現しています。
広めだけど弾きやすいナット幅
ナット幅とは、ギターのヘッドと指板の間にあるパーツを「ナット」と呼び、その幅のことを指します。
テイラーでは、シリーズによって2種類のナット幅があり・・・
42.9mm : ナローネック
44.5mm : レギュラーネック
414ce Rosewoodはナット幅44.5mmのレギュラーネックを採用しています。
レギュラーネックとナローネックのナット幅の差は、わずか1.6mmですが、握った感覚は全く違います。
ナローネックは下位シリーズ(200番台以下)で採用されており、初心者が握りやすくコードチェンジしやすいというメリットがあります。
一方、レギュラーネックは、300番台以降の上位シリーズで採用されている定番ネック。
特にフィンガー・ピッキングをする人は、頻繁に押弦するので広めの指板を好みます。
そもそもテイラーのネックは他メーカーと比べて薄めに作られているので、44.5mmでも押弦しやすいという特徴があります。
高品質なピックアップを搭載
テイラーの定番3桁シリーズには、すべてES2(Expression System 2)という独自のピックアップが搭載されています。
「taylorguitars.com」より引用
ピックアップとは、アコギ(エレアコ)の音を外部へ出力するためのもので、アンプに接続することで大音量が必要なステージなどで活躍します。
このピックアップには大きく2つの方式があり・・・
- ピエゾ方式 : ギターの振動を拾い、電気信号に変換する方式
- マグネット方式 : 6本の磁石で音の振動を感知する方式
テイラーのES2は、①のピエゾ方式を採用していますが、一般的なそれとは一線を画しています。
一般的なピエゾ方式は、ピエゾ素子(センサー)をブリッジサドルの下に配置していますが、テイラーではブリッジサドルの後方に配置。
これにより、エレアコにありがちな“ピエゾ臭”と言われる不自然な機械音ではなく、ギター本来の箱鳴りに限りなく近いサウンドを再現してくれます。
414ce Rosewoodをレビュー
ここからは、僕が実際に試奏してみての評価を述べていきます。
まず、結論としては・・・
材も定番だが造りも定番なのでサウンドも定番。生音は面白みに欠けるけどPUサウンドは◎
414ce Rosewoodは、基本的にテイラーではスタンダードなスペックなので「はじめの1本」としても間違いないモデルです。
ただし、他のモデルと比べると、やや物足りないところがいくつかあります。
・フィニッシュは6.0milなので“鳴り”はそこそこ
材のグレードは「なし」
材のグレードとは“見た目の美しさ”を指すのですが、414ce Rosewoodの木目はいたって普通です。
同じローズウッドの814ceと比較すると・・・
814ceの方が色が濃く、木目がくっきりしています。
テイラーではローズウッドのグレードを「なし」「A(シングルエー)」「AA(ダブルエー)」の3段階で分類しています。
414ce Rosewoodのグレードは「なし」です。(814ceは「A」)
よく「木目でギターを選ぶ」という人がいますが、個人的に414ce Rosewoodはどの個体を選んでも木目はそんなに変わらないという印象です。
ちなみに・・・
見た目が美しい = 鳴りがいい
というわけではないので、見た目重視ではない人には414ce Rosewoodはコスパに優れたモデルと言えます。
フィニッシュは6.0milなので“鳴り”はそこそこ
フィニッシュとは、ギターのボディを製造する過程で塗料を吹き付ける工程のこと。
「taylorblog」より引用
この工程は仕上げの段階で行われることから「フィニッシュ」と呼ばれています。
414ce Rosewoodのフィニッシュの厚みは6.0mil(ミル)。
メートル法に直すと、0.1524mmです。
これはテイラーの標準の厚みですが、同じローズウッドの814ceは4.5mil(0.1143mm)と、さらに薄くなります。
フィニッシュは塗膜が厚いほど材の振動を抑えてしまうので、814ceと比べると414ce Rosewoodの鳴りは、やや物足りないという印象・・・。
ただし、PUにつなげて演奏する人の中には「814ceは鳴り過ぎるので、あえて414ce Rosewoodを使用している」という人もいます。
PUサウンドに関しては、僕も414ce Rosewoodのほうが耳触りが良い印象です。
Taylorの414ce-Rと814ceの違いは?調べて分かったスペックからは見えない“こだわり”
推奨弦はエリクサー
414ce Rosewoodの出荷時に張られている弦はエリクサー(Elixir)の「フォスファー・ブロンズ・ナノウェブ・ライト(Phosphor Bronze NANOWEB Light)」です。
数ある弦の中でテイラーがエリクサーを推奨する理由は「長持ちするから」
一般的なメーカーの弦は1ヶ月ほどで錆び始めますが、エリクサーは、その2〜3倍は持つと言われています。
その理由は、弦を極薄の膜でコーティングしているから。
「elixirstrings.jp」より引用
このコーティングが湿気や汗など、皮膚に付着した汚れからから弦を守ることで、サウンドの劣化を防いでいます。
最近は他メーカーでもコーティング弦が発売されていますが、実は弦をまるごとコーティングしているのはエリクサーだけです。
まるごとコーティングはエリクサーの特許技術なので、他メーカーは真似できないというわけです。
他メーカーは、巻弦の隙間はコーティングしていないので、その隙間から劣化が始まると言われています。
僕もいろんなメーカーの弦をテイラーに張って試してきましたが、今のところエリクサーで落ち着いています。
【Taylor】工場出荷時に張っている弦まとめ【Elixir / D’Addario】
価格について
それに伴い、下の価格表も書き換えましたので以前読まれた方は注意してください。
414ce Rosewoodのメーカー希望小売価格、実売参考価格は以下の通りです。
メーカー希望小売価格 | 実勢売価 | |
414ce Rosewood | ¥649,000 | ¥519,200 |
参考までに、同じローズウッドの814ceは実売で約70万円です。
尚、テイラーは販売価格が比較的安定しており、全国的に一律の価格設定となっていますが、まれに特化で売り出されることがあります。
急ぎでない人は、時々、価格をチェックすることをおすすめします。
競合はD-28
他メーカーで414ce Rosewoodと同価格帯のモデルと言えば、マーチンの「D-28」です。
スペックもシトカ・スプルース×インディアン・ローズウッドなので、どちらを買うかで迷う人も多いと思います。
同じ材の組み合わせですが、サウンドは結構違います。
D-28は6本の弦が“塊”になってサウンドホールから飛び出てくるイメージで、414ce Rosewoodはシャワーのように粒で降り注ぐサウンド。
音の好みに関しては千差万別なので、どちらも試奏してみて選ぶほうがいいと思います。
中古も狙い目
414ce Rosewoodの中古相場は、個体の状態にもよりますが約25〜30万円です。
中古の場合、2018年以前のモデルはV-ClassブレーシングではなくXブレーシングとなっていますので注意が必要です。
ちなみに、V-ClassとXは、ナットの色で見分けることが可能。
V-Classは「黒」、Xは「白」です。
まとめ
冒頭でも書きましたが、414ce Rosewoodは2016年の登場当初から売れ筋に名を連ねる人気モデルです。
僕の評価としては「面白みに欠ける」「物足りない」などネガティブな言葉を並べましたが、それはスペック・サウンドどれを取っても標準的だから。
ただし、それが高評価の理由とも言えます。
814ceや914ceのような上位モデルはギラギラした見た目にサウンドもゴージャスで、それはそれでいいのですが、ずっと弾いていると疲れるんですよね・・・。笑
414ce Rosewoodは標準的であるからこそ弾いていて安心できるし、ずっと聴いていられる安心感があります。
2本目・3本目のギターとして選ばれる理由もここにあるのだと思います。