テイラー(Taylor)に限らず、アコースティックギターの王道のスペックは、トップにシトカ・スプルース、サイド&バックにインディアン・ローズウッドの組み合わせです。
テイラーのラインナップでは「400-Rosewoodシリーズ」と「800シリーズ」がそれに当たりますが、その価格は約51万円と約70万円。
20万円近い開きがありますが、何が違うのか?
この記事では、両シリーズの売れ筋モデルである414ce-Rosewood(以下414ce-R)と814ceに焦点を当てて、違いを深堀りしていきます。
414ce-Rと814ceの共通スペック
まず、414ce-Rと814ceの共通スペックは以下の通り。
414ce-Rと814ceの共通スペック | |
ボディ・シェイプ | グランド・オーディトリアム |
トップ材 | シトカ・スプルース |
サイド&バック材 | インディアン・ローズウッド |
ネック材 | トロピカル・マホガニー |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | V-Class |
ピックアップ | ES2 |
アコースティックギターとしての基本的なスペック要素は全く一緒です。
トップ材、サイド&バック材は共に単板。
超が付くほどスタンダードな仕様となっています。
414ce-Rと814ceの違い
上記スペックを踏まえた上で、414ce-Rと814ceの主な違いは以下の通り。
414ce-R |
814ce |
---|---|
サイド&バック材のグレード | |
なし A・AAの選別から外れたものを使用 |
A(シングルエー) 見た目の美しいものを使用 |
ボディ・フィニッシュ | |
グロス6.0mil テイラーの標準の厚み |
グロス4.5mil 鳴りを重視し、より薄くしている |
アームレスト | |
なし |
あり |
バインディング | |
プラスチック |
木材(ローズウッド) |
実勢売価 | |
約52万円 |
約70万円 |
まず結論ですが・・・
「とにかく鳴り重視!」
という方には814ceがおすすめ。
「定番のアコギサウンドが欲しい!」
という方には414ce-Rをおすすめします。
実は見た目だけ?サイド&バック材のグレード
414ce-Rと814ceのサイド&バック材は、共にインディアン・ローズウッドです。
しかし、同じ材でもグレードが違います。
414ce-Rは「グレードなし」、814ceは「A(シングルエー)」です。
では、このグレードというのは、一体、何を指すのか?
それは“見た目の美しさ”です。
上の画像を見れば一目瞭然ですが、414ce-Rよりも814ceの方が色が濃く、木目がクッキリしています。
実はこの“見た目”がインディアン・ローズウッドのグレードを左右する要素です。
ローズウッドは和名を「紫檀」(したん)と言い、より紫に見えるものほど材としての価値が上がります。
グレードの格付けには明確な線引があるわけではなく、テイラー社のバイヤーの主観で選ばれます。
ちょっと蛇足しますが、各シリーズで使用されるインディアン・ローズウッドのグレードは以下の通りです。
700 Series・・・A(シングルエー)
800 Series・・・A
900 Series・・・AA(ダブルエー)
実は、700と800はグレードが同じ。
違いはトップ材がルッツ・スプルースかシトカ・スプルースか、ということになります。
900に関しては後述しますが、見た目の美しさは段違いです。
これが本体の価格差を生む最大の要因でもあります。
ただし・・・
見た目が美しい = 鳴りがいい
というわけではありません。
あくまで見た目の違いです。
そういう意味では、414ce-Rはコストパフォーマンスに優れたモデルとも言えます。
鳴りに直結するボディ・フィニッシュの違い
ボディの鳴りを左右する要素としてボディ・フィニッシュの違いがあります。
「TaylorBlog」より引用
ボディ・フィニッシュとは、ボディの製造過程で塗料を吹き付ける工程のこと。
この工程は、仕上げの段階で行われることからフィニッシュと呼ばれています。
フィニッシュを行う理由は、ギター表面の保護とサウンド安定化です。
フィニッシュには様々な種類がありますが、414ce-Rと814ceはグロス仕上げとなっています。
グロス・フィニッシュは、一般的にはポリエステル塗装と呼ばれ、液垂れしにくく速乾性の高い塗料です。
塗布する際に気泡が出にくく、ヴィンテージギターによくあるウェザーチェックの発生も少ないというメリットがあります。
414ce-Rと814ceは、グロスを塗布する厚さが違います。
414ce-Rは6.0ミル、814ceは4.5ミルです。
ミル(mil)とは、ヤード・ポンド法の単位で・・・
1.0mil = 0.0254mm
つまり414ce-Rの6.0ミルは、0.1524mm。
一般的なA4用紙2枚分の厚さとなります。
814ceの4.5ミルは0.1143mmです。
わずかな差ですが、これが材の振動に大きく影響しています。
フィニッシュは塗膜が厚いほど材の振動を抑えてしまいます。
414ce-Rの6ミルは、テイラーでは標準の厚みです。
814ceに関しては、更に薄いので鳴りは抜群です。
これが414ce-Rと814ceのサウンドの違いを生んでいます。
これがサウンドの要!?Taylorのボディ・フィニッシュの種類について
弾き心地に差を生むアームレストの有無
アームレストとは、ボディの側面の面取りされた部分を指します。
「Taylor公式HP」より引用
これがあるだけで長時間の演奏でも右腕が痛くなりにくいです。
さらに、右腕を上げる角度が浅くなるので、弾きやすくなるというメリットも。
このアームレストは2020年以降に発売された800シリーズに搭載されています。
400シリーズには付いていません。
ここも価格差に現れている部分ですね。
バインディングの素材の違い
バインディングとは、ボディ角に沿って貼り付けられた装飾のこと。
装飾以外の用途として、ボディを衝撃から保護する役割もあります。
「Taylor公式HP」より引用
414ce-Rには白いプラスチック、814ceには木材(ロック・メイプル)が使われています。
プラスチックは一般的なバインディング素材として使用されており、経年変化で黄ばみます。
これを「味」として楽しむのがギターの醍醐味とされています。
一方で、プラスチックは「安っぽい」というイメージを持つ人も一定数います。
そういった人には、メイプルを使用している814ceの方が高級感があっておすすめです。
尚、814ceにはネックとヘッドにもバインディングが施されています。
「Taylor公式HP」より引用
その他の装飾も違う
414ce-Rと814ceはバインディング以外にも、装飾に違いがあります。
例えば、ロゼッタと呼ばれるサウンドホール周りの装飾。
414ce-Rはプラスチック、814ceはアバロン(あわび)です。
さらに、ピックガードも414ce-Rはプラスチック、814ceは木材(ローズウッド)です。
414ce-Rと814ceはこんな人におすすめ
冒頭でも書きましたが・・・
414ce-Rは「定番のアコギサウンドが欲しい」という人におすすめです。
814ceは「とにかく鳴り重視」という人におすすめ。
弾き比べると、サウンドの違いははっきりと分かりますが、個人的には814ceに軍配が上がります。
814ceの更に上をいく914ce
テイラーには、400/800シリーズの上位版として900シリーズが存在します。
「taylorguitars.com」より引用
414ce-Rと814ceの比較対象は914ceですが、これまでに解説してきたスペックの更に上をいく仕様となっています。
・サイド&バック材のグレードがAA(ダブルエー)
・フィニッシュは3.5mil
・ゴトー製の510ペグ
・エボニー製のアームレスト
・丸みを帯びたボディ・エッジ
サウンド・弾き心地共に段違いですが、その分、価格も跳ね上がります・・・。
価格差について
それに伴い、下の価格表も書き換えましたので以前読まれた方は注意してください。
参考として、上で紹介した914ceの価格も載せておきます。
メーカー希望小売価格 | 実売参考価格 | |
414ce-R | ¥649,000 | ¥519,200 |
814ce | ¥880,000 | ¥704,000 |
914ce | ¥1,265,000 | ¥1,012,000 |
実売価での価格差は184,800円です。
この価格差を安いと見るか、高いと見るかは人それぞれですが、個人的には妥当かと思います。
まとめ
以上が414ce-Rと814ceの違いの解説でした。
上記を踏まえて、まとめると・・・
- サイド&バック材のグレードは「なし」
- ボディ・フィニッシュはグロス6.0mil
- アームレストなし
- バインディングはプラスチック
- サイド&バック材のグレードは「A」
- ボディ・フィニッシュはグロス4.5mil
- アームレストあり
- バインディングは木材
テイラー全般に言えることとして、どのモデルを弾いても「弾きやすい」と評されますが、814ceは更に弾きやすさを追求した“こだわりのモデル”と言えます。
かと言って、414ce-Rが弾きにくいということでは無いです。
繰り返しになりますが、僕がおすすめする選ぶポイントとしては、やはり「鳴り」です。
実際に弾き比べて好みのサウンドで選ぶのがいいと思います。
はじめまして。
ポンさんのテイラー記事、楽しく読ませていただいております。
この414と814の比較なんですが
ES2で増幅再生された音は414と814ではやはりかなり違うのでしょうか?
アンプから出る音はミッドレンジのジャリジャリ音を抑えるエフェクターなどで加工できますよね。
それでも814のほうが414よりよい音なんでしょうか?
Ken tominagaさん
はじめまして!
コメント気づかずお返事遅くなりすみません!
ピックアップをつないだ場合、サウンドの違いはあまり出ない。というのはメーカーが言っていることなのですが、僕が楽器店で試奏した限りではサウンドの違いは確かにある感じました。
「いい音」の定義は千差万別なので、どちらがいいとは言えませんが、個人的にはPUにつないだ場合の好みは414ceでした。
814ceだとやや鳴りすぎる印象です。
ただし、EQを全部フラットにしての試奏でしたので、追い込めば814ceでも理想のサウンドになると思います。
そういった点で選ぶ基準としては生のサウンドの好みということになるかと。
回答になっていなかったらすみません。。
ポンさん、お返事ありがとうございます。
「いい音」の定義は千差万別なのは同意出来ます。
あとはあくまで個人的な好みで書きますね。
最初テイラーの814CE DLX(デラックス)を弾きました。
アディロンダックスプルースをブレイシングに使用していた機種です。
それを島村楽器で試奏した時
なんか音量はあるんだけれど、がしゃんがしゃんという金属的というか
ガラスできたベルの音を思わせるような音に聴こえました。
自分は主観でもっと丸みのある音・・・あたたかい音が欲しかったのでそれはパスしました。2018年にVClassになったばかりの414CE-RWを試奏してそれを購入しました。その音は814の派手さはないけれど自分の好みの音でした。翌年グランドパシフィックのシェイプが発売になったときに、そちらを選択しておけば、と少し後悔しましたが(^_^;
でも、いまはそれなりに414CE-RWは鳴り出して満足しています。VClassブレーシングは音の成長も早いように感じられます。やはりテイラーを選んで良かったです。
ポンさん、今後もいろいろな情報を期待しています。