テイラー(Taylor)の定番3桁シリーズ(300〜900番台)のサイド&バックに使用されているトーン・ウッドは大きく4種類に分かれています。
300/500 series | マホガニー系 |
600 series | メイプル系 |
700 series | コア系 |
400/800/900 series | ローズウッド系 |
ローズウッドやマホガニーは他メーカーでも定番モデルでよく採用される材として知られていますが・・・
今回取り上げるのは、メイプル材を使っている600シリーズ。
「Taylor公式HP」より引用
600シリーズは、テイラーの数あるシリーズの中でもマニアに評価の高いモデルとして人気です。
その特徴は・・・
- 低音域から高音域にかけてのフラットなトーン
- 新品なのに弾き込まれたようなサウンド
- 伸びのあるサスティーン
テイラーではメイプルの特性をいかしながら、上記の特徴を実現する工夫を凝らし600シリーズを進化させてきました。
この記事では、その特徴を深堀りし、600シリーズの魅力を解剖していきます。
メイプルとは
冒頭で言及した通り、テイラーの600シリーズはサイド&バックにメイプル(Maple)という材が使われています。
メイプルはカエデ属の植物で、テイラーではアメリカ北部からカナダにかけて自生する木を使用しています。
その特徴は、独特なトラ目。
「taylorguitars.com」より引用
ひと目で「これはメイプルだ」と分かる模様をしています。
600シリーズの特徴
メイプルを使った600シリーズに共通する特徴は以下の通り。
低音域から高音域にかけてフラットなトーン
メイプルのサウンド面の特徴が、低音域から高音域までフラットに聴こえることです。
「taylorguitars.com」より引用
つまりプレイヤーの意思がそのまま音に反映するということ。
暗く弾けば暗い音、明るく弾けば明るい音になります。
このことからフィンガーピッキングなど繊細な表現に向いた材と言えます。
伸びのあるサスティーン
永らくトーンウッドとしてのメイプルの弱点は、サスティーンが短いことでした。
そこでテイラーは、2015年と2018年に600シリーズのリニューアルに着手し、より伸びのあるサスティーンを実現させました。
2015年のリニューアルが、ブレーシングの調整。
ブレーシングとは「力木」(ちからぎ)と呼ばれる、ボディの強度を上げるためにギターの内側に張られた棒状の材のこと。
「NEW ATLAS」より引用
600シリーズのブレーシングは、その他のシリーズとちょっと違います。
下の画像は、メイプル(左)とローズウッド(右)のバック材に張られたブレーシングです。
ローズウッドのブレーシングがサイドにまで達しているのに対して、メイプルは届いていません。
これは、材の鳴りを重視してブレーシングをあえて短くしているのです。
こうすることでサスティーンが向上し、伸びのあるサウンドに生まれ変わりました。
そして2018年のリニューアルが、V-Classブレーシングの採用。
「Taylor公式HP」より引用
V-Classブレーシングは300シリーズ以降の上位モデルに採用されたテイラー独自のブレーシングです。
メインの骨組みがV(ヴイ)状に張られているのが分かります。
従来のブレーシングは、X(エックス)型と言って、2つ上の画像のようにメインの骨組みが大きくX状に張られています。
これは、マーチン(Martin)が100年以上前に考案したものがベースとなっており、ほとんどのギターメーカーが採用しています。
テイラーも創業から永らくXブレーシングでしたが、前途の通り2018年にオリジナルのV-Classを開発。
ブレーシングはギターの強度を高める役目を果たしていますが、材の振動を押さえてしまうというデメリットもありました。
そのため犠牲になっていたのがサスティーンです。
V-ClassブレーシングはギターのトップにXブレーシングと異なる振動をさせ、堅さと同時に柔軟性にも対応させることでサスティーンを向上させることに成功。
これら2つのリニューアルにより、テイラーのメイプルは高い評価を受けるようになったのです。
新品なのに弾き込まれたようなサウンド
600シリーズのリニューアルで、もうひとつ特徴的なのが、トップ材に採用されたトレファイド加工です。
「Taylor公式HP」より引用
トレファイド(torrefied)とは、いわゆる焙煎のこと。
高温の窯の中で長時間、加熱することで材の細胞構造を変化させ、長く弾き込まれたようなサウンドを再現することができる技術です。
この技術自体は、他メーカーでも採用されていて、マーチンならVTS(ヴィンテージトーンシステム)、ヤマハならARE(アコースティックリゾナンスエンハンスメント)など呼び名は違えど同じような技術で商品化されています。
600シリーズのラインナップ
2022年8月現在、600シリーズは6モデルがラインナップされています。
- 612ce
- 612ce 12Fret
- 614ce
- 618e
- Builder’s Edition 614ce
- Builder’s Edition 652ce
基本的な違いはボディ・シェイプですが、細かい部分に違いがあります。
612ce |
612ceは、グランド・コンサート(Grand Concert)、通称GCと言うボディ・シェイプ。
マーチンの00(ダブルオー)に近いサイズ感で、女性や小柄な男性に人気のモデルです。
600シリーズのラインナップでは一番小さく、ボディの厚みも浅めなので、身体に引き寄せて弾くことができるのが特徴。
演奏スタイルでは、特にフィンガー・ピッキングする人に選ばれる傾向にあります。
612ce 12Fret |
こちらは612ceの12フレットジョイントのモデルです。
通常のアコギは、ネックとボディの境目が14フレット目にあります。
このモデルは写真で見てもらうと分かる通り、12フレット目にあります。
その分、ネックがショートしているので、体格の小さな人には弾きやすいモデルとなっています。
612ceを検討している人は、このモデルも試奏してみて好みに合わせて買うといいかと思います。
614ce |
614ceは、テイラーで最も人気の高いグランド・オーディトリアム(Grand Auditorium)、通称GAというシェイプです。
特徴は、大き過ぎず小さ過ぎずフラットピックでのストロークから、フィンガースタイルまで幅広いプレイスタイルに対応した万能型。
テイラーを初めて買う人は、とりあえずこのシェイプを買えば間違いないと思います。
618e |
618eはテイラーのボディ・シェイプで一番大きいサイズのモデルです。
抱えてみると、そのサイズ感に圧倒されますが、その分ストロークした時のパンチ力や倍音の響きはテイラーでも随一。
一般的に「ジャンボ(Jambo)」という括りになり、ギブソン(Gibson)やギルド(Guild)にも同じようなスペックのモデルがあります。
ジャンボサイズのギターを探している人は、是非、このギターも試奏してみてください。
Builder’s Editionについて
ビルダーズ・エディション(Builder’s Edition)は、上記で紹介した定番シリーズの基本的なスペックに、弾き心地を追求した機能を盛り込んだ“特別仕様”のモデルです。
600シリーズでは2モデルがラインナップされています。
Builder’s Edition 614ce |
Builder’s Edition 652ce |
ビルダーズ・エディションの詳細については「これぞTaylorの真骨頂!?Builder’s Editionについて分かりやすく解説してみた」という記事で紹介しています。
価格について
それに伴い、下の価格表も書き換えましたので以前読まれた方は注意してください。
600シリーズは、テイラーの定番3桁シリーズでも上位に位置づけられています。
そのため実売でも60万円を超える価格設定です。
メーカー希望小売価格 | 実売参考価格 | |
612ce | ¥825,000 | ¥660,000 |
612ce 12Fret | ¥825,000 | ¥660,000 |
614ce | ¥825,000 | ¥660,000 |
618e | ¥825,000 | ¥660,000 |
BE 614ce | ¥946,000 | ¥756,800 |
BE 652ce | ¥979,000 | ¥783,200 |
実は、600シリーズは昨今の材の高騰で値上がりしています。
テイラーのシリーズは桁が上がる程、価格も上がるのですが、700シリーズの方が安いです。
価格で比較するなら800シリーズあたりが競合になります。
その辺りは、好みの音で選べばいいかと思います。
まとめ
冒頭でも言いましたが、テイラーの600シリーズはマニアに人気のシリーズです。
その特徴は・・・
- 低音域から高音域にかけてフラットなトーン
- 新品なのに弾き込まれたようなサウンド
- 伸びのあるサスティーン
個人的には、600シリーズは価格差がそれほど大きくないのでGAの購入を考えている人はビルダーズ・エディション(BE)を買ったほうがいいと思っています。
というか、実際に僕はBE614ceを買いました。
弾きやすさという面では圧倒的にビルダーズ・エディションをおすすめします。