突然ですが、アコースティックギターの定番材と言えば、インディアン・ローズウッドが有名です。
テイラー(Taylor)では814ceがフラッグシップモデルとして知られていますが・・・
Image:Taylor
614ceは、サイド&バック材にメイプルを使用したエレアコです。
その特徴は・・・
- 低音域から高音域にかけてフラットなトーン
- 伸びのあるサスティーン
- 新品なのに長年弾き込まれたようなサウンド
- 極薄フィニッシュで抜群の鳴り
この記事では、そんな614ceのスペックを深堀り。
テイラーにとって特別なモデルであることが分かると思います。
614ceの基本スペック
まず、テイラーのラインナップの中で、614ceがどのグレードに位置にするのかを紹介します。
テイラーのシリーズ別のランクでは「定番」に位置し、その中でも上位のシリーズです。
614ce |
ボディ・シェイプ | グランド・オーディトリアム |
トップ材 | トレファイド・シトカ・スプルース |
サイド&バック材 | メイプル |
ネック材 | ハード・ロック・メイプル |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | V-Class |
ピックアップ | ES2 |
ボディ・シェイプはテイラーでは定番のグランド・オーディトリアム、通称GAという形状。
GAは1994年に発表されたテイラーのオリジナル・シェイプ。
大きすぎず小さすぎず、フィンガー・ピッキングからフラットピックでのストロークまで幅広いプレイに対応した万能型です。
サイド&バック材はメイプル
614ceのサイド&バックに使用されているのはメイプル(Maple)という材です。
メイプルはカエデ属の植物。
テイラーではアメリカ北部からカナダにかけて自生する木を使用しています。

「taylorguitars.com」より引用
サウンド面の特徴は、低音域から高音域までフラットに聴こえること。
プレイヤーの意思がそのまま音に反映し、明るく弾けば明るい音に、暗く弾けば暗い音になります。
フィンガー・ピッキングなど、繊細な表現に向いた材と言えます。
ブレーシングはV-Class
ブレーシングとは、ボディの強度を上げるためにギターの内側に張られた棒状の材のこと。

「Taylor公式HP」より引用
V-Classブレーシングはテイラーのオリジナル設計で、メインの骨組みが左右対称に「V」(ヴイ)状に張られています。
従来のブレーシングは、メインの骨組みが「X」(エックス)状に張られたXブレーシングが一般的です。

「NEW ATLAS」より引用
2つの構造を並べてみると、その違いは一目瞭然。
V-ClassブレーシングはXブレーシングと比べて、音の分離やサスティーンが強化されています。
高品質なピックアップを搭載
614ceにはES2(Expression System2)という独自のピックアップが搭載されています。
ピックアップとは、アコギ(エレアコ)の音を外部へ出力するためのもので、アンプに接続することで大音量が必要なステージなどで活躍します。
このピックアップには大きく2つの方式があり・・・
① ピエゾ方式 | : |
ピエゾ素子でギターの振動を拾い、電気信号に変換する方式。 |
② マグネット方式 | : | 6本の磁石で各弦の振動を感知する方式。 |
テイラーのES2は①のピエゾ方式です。
一般的にピエゾ方式は、ピエゾ素子をブリッジサドルの真下に配置していますが、ES2はブリッジサドルの後方に設置しています。
これによりエレアコにありがちな“ピエゾ臭”と言われる不自然な機械音ではなく、アコギ本来の箱鳴りに限りなく近いサウンドを再現できます。
614ceの特徴をレビュー
ここからは基本スペックでは見えにくい614ceの特徴をまとめています。
伸びのあるサスティーン
一般的に、メイプルはサスティーンが短いことがデメリット言われています。
先述したように、テイラーではV-Classブレーシングでサスティーンの伸びを向上させましたが、614ceのブレーシングは他のシリーズとちょっと違います。
下の画像は、メイプル(左)とローズウッド(右)のバック材に張られたブレーシングです。
ローズウッドのブレーシングがサイドまで達しているのに対して、メイプルは届いていません。
これは材の鳴りを重視して、あえてブレーシングを短くしているのです。
こうすることで、更にサスティーンが向上し、伸びのあるサウンドに仕上げています。
新品なのに長年弾き込まれたようなサウンド
614ceの特筆すべき特徴のひとつが、トップ材に採用しているトレファイド加工です。

「taylorguitars.com」より引用
トレファイド(torrefied)とは、いわゆる焙煎のこと。
高温の窯の中で長時間、加熱することで材の細胞構造を変化させ、長年弾き込まれたようなサウンドを再現できる技術です。
フラットなトーンのメイプルと合わせることで、サウンドに深みを足しているということですね。
他メーカーのメイプルモデルと比べても、サウンドに深みがあり心地良い響きに感じられます。
極薄フィニッシュで抜群の鳴り
テイラーに限らず、世の中のほとんどのギターには、ボディの製造過程で塗料を吹き付ける工程があります。
この工程は仕上げの段階で行わることから「フィニッシュ」と呼ばれています。

「TaylorBlog」より引用
フィニッシュを行う理由はギター表面の保護とサウンドの安定化です。
フィニッシュには様々な種類がありますが、614ceはグロス仕上げとなっています。
グロス・フィニッシュは、一般的にポリエステル塗装と呼ばれ、液垂れしにくく速乾性の高い塗料。
塗布する際に気泡が出にくく、ヴィンテージギターによくあるウェザーチェックの発生が少ないというメリットもあります。
テイラーではグロスの標準の厚みは6.0ミル、一般的なA4用紙2枚分の厚さとなります。
一方、614ceは4.5ミルで、更に薄く塗布されています。
これはフラグシップモデルの814ceと同じ厚み。
614ceがいかに鳴りを重視して作られているかが分かります。
これがサウンドの要!?Taylorのボディ・フィニッシュの種類について
広めだけど弾きやすいナット幅
ナット幅とは、ギターのヘッドと指板の間にあるパーツを「ナット」と言い、その幅のことを指します。
テイラーではシリーズによって2種類のナット幅があり・・・
42.9mm | : |
ナローネック |
44.5mm | : |
レギュラーネック |
614ceは44.5mmのレギュラーネックを採用しています。
握った感覚はかなり違う
ナローネックとレギュラーネックのナット幅の差は、わずか1.6mmですが、握った感覚は全く違います。
ナローネックはテイラーの下位シリーズ(200番台以下)で採用されており、初心者が握りやすくコードチェンジしやすいというメリットがあります。
一方のレギュラーネックは、300番台以降の上位シリーズで採用されている定番ネック。
特にフィンガー・ピッキングをする人は、頻繁に押弦するので広めの指板を好みます。
そもそもテイラーのネックは他メーカーと比べて薄く作られているので、44.5mmでも押弦しやすいという特徴があります。
推奨弦はエリクサー
614ceの工場出荷時に張られている弦はエリクサー(Elixir)の「フォスファー・ブロンズ・ナノウェブ・ライト(Phosphor Bronze NANOWEB Light)」です。
数ある弦の中でテイラーがエリクサーを推奨する理由は「長持ちするから」
一般的なメーカーの弦は1ヶ月ほどで錆び始めますが、エリクサーは、その2、3倍は持つと言われています。
その理由は、弦を極薄の膜でコーティングしているから。

「elixirstrings.jp」より引用
このコーティングが湿気や汗などの皮膚に付着した汚れから弦を守ることで、サウンドの劣化を防ぎ、長持ちさせているのです。
最近は他メーカーでもコーティング弦が続々と発売されていますが、実は弦をまるごとコーティングしているのはエリクサーだけです。
まるごとコーティングはエリクサーの特許技術なので、他メーカーは真似できないというわけです。
他のメーカーは、巻弦の隙間はコーティングしていないので、その隙間から劣化が始まると言われています。
僕もいろんなメーカーの弦をテイラーに張って試してきましたが、今の所、エリクサーで落ち着いています。
【Taylor】工場出荷時に張っている弦まとめ【Elixir / D’Addario】
頑丈なハードケースが付属
614ceには、頑丈なハードケースが付属しています。

「taylorguitars.com」より引用
テイラーのGAにぴったり合わせたサイズで、614ceを隙間なく収めることができます。

「taylorguitar.com」より引用
ところが、このハードケース、重いです。
スタジオやライブ会場まで、公共交通機関で移動する人は持って行くだけで疲れます・・・。
なるたけ軽いケースがいい人には、別売りでギグバッグがありますのでオプションとして購入をおすすめします。
豪華な装飾でステージ映え!
これはスペックとは関係ない部分ですが、614ceは他のシリーズと比べて装飾も豪華です。
まず、サウンドホール周りのロゼッタ。

「taylorguitars.com」より引用
プラスチックではなく、光沢のあるパウア貝で装飾されています。
さらに、バインディングやパーフリングにも木材を使用。

「taylorguitars.com」より引用
そして個人的に一番好きなのが、ヘッド裏に施されたインレイ!

「taylorguitars.com」より引用
実はヘッド裏にインレイがあるのは600シリーズだけです。
ステージ上では見えないですが、コードチェンジ時にちらっと見えるだけでもテンションが上ります!
価格について
それに伴い、下の価格表も書き換えましたので以前読まれた方は注意してください。
614ceは、テイラーの定番3桁シリーズでも上位に位置づけられているため、実売でも60万円を超える価格設定です。
メーカー希望小売価格 | 実売参考価格 | |
614ce | ¥825,000 | ¥660,000 |
これはメイプル材の価格が高騰しているため、致し方ない部分でもあります。
尚、テイラーは販売価格が安定しており、全国的に一律の価格設定となっていますが、小さな打痕や引っかき傷のある在庫だと新品特価で売り出される時があります。
中古も狙い目
614ceの中古相場は、個体の状態にもよりますが25〜30万円です。
中古の場合、2018年より前のモデルだとV-ClassブレーシングではなくXブレーシングですので注意が必要です。
ちなみにXとV-Classは、ナットの色で見分けることが可能。
V-Classは「黒」、Xは「白」です。
まとめ
以上のことから614ceの特徴をおさらいすると・・・
- 低音域から高音域にかけてフラットなトーン
- 伸びのあるサスティーン
- 新品なのに長年弾き込まれたようなサウンド
- 極薄フィニッシュで抜群の鳴り
アコギの材ではインディアン・ローズウッドやマホガニーが人気ですが、個人的にはメイプルが一番好みです。
614ceは装飾もフラッグシップの814ceなみとなっており、ステージでも映えます。
テイラーはサウンドの個体差の少ないメーカーとしても知られていますが、購入前には是非、試奏してみることを強くおすすめします。
この記事がギター選びの参考になれば幸いです。