テイラー(Taylor)のアカデミー・シリーズは、2017年に発表された初心者向けのビギナーズモデルです。
「Taylorguitars.com」より引用
価格を抑えながらも、演奏性の高い機能を盛り込み、初めてギターを買う人に人気のシリーズとなっています。
この記事では「アコギ(エレアコ)を初めて買う」という人に向けて、アカデミー・シリーズの特徴や機能性を具体的に紹介。
その人気の秘密を探っていきます。
Academy Seriesのコンセプト
アカデミー・シリーズのコンセプトは、ずばり・・・
「ビギナーが途中でギターをやめてしまわないように」
「taylorguitars.com」より引用
結論から言うと・・・
- 弾きやすくて、音がいいギターが欲しい
- 演奏スタイルを選ばない、オールラウンダーなギターが欲しい
- とにかく手頃な価格のギターが欲しい
上記の3つの要望を網羅しているのが、アカデミー・シリーズです。
一般的に初心者向けのギターは安さが売りですが、肝心の弾きやすさやサウンドがおろそかになって、結局やめてしまうということが多々あります。
アカデミー・シリーズは、安いながらも初心者が心地よく弾けるための機能を盛り込むことで、中・上級者も納得できるモデルになっています。
Academy Seriesの立ち位置
下の図は、テイラーが展開するシリーズをグレード別で分けたピラミッドです。
アカデミー・シリーズはビギナー向けということもあり、下から2番目のグレードになります。
ただし、繰り返しになりますが、アカデミー・シリーズには「安いギター=弾きにくい」が常識という業界の定説を覆す様々な機能が盛り込まれています。
では、具体的にそれらの特徴は何なのか。
その前に、アカデミーシリーズのラインナップを紹介します。
Academy Seriesのラインナップ
アカデミーシリーズには3つのモデル、ピックアップの有無を含めて全6モデルがラインナップされています。
Academy 10 / Academy 10e |
ボディ・シェイプ | ドレッドノート |
トップ材 | シトカ・スプルース |
サイド&バック材 | レイヤード・サペリ |
ネック材 | ハードロック・メイプル |
フレットボード材 | エボニー |
「Academy 10」はアコギの定番であるドレッドノートというボディ形状のモデル。
フラットピックを使ってストロークする人には、こちらのモデルがオススメです。
Academy 12 / Academy 12e |
ボディ・シェイプ | グランド・コンサート |
トップ材 | シトカ・スプルース |
サイド&バック材 | レイヤード・サペリ |
ネック材 | ハードロック・メイプル |
フレットボード材 | エボニー |
こちらの「Academy 12e」は、Academy 10と比べて小ぶりなグランド・コンサート(GC)という形状。
フィンガーピッキング向けのモデルですが、ストロークでも小柄な女性に選ばれています。
Academy 12-Nylon / Academy 12e-Nylon |
ボディ・シェイプ | グランド・コンサート |
トップ材 | ルッツ・スプルース |
サイド&バック材 | レイヤード・マホガニー |
ネック材 | マホガニー |
フレットボード材 | エボニー |
「Academy 12e-N」は、ナイロン弦のモデルです。
いわゆるクラシック・ギターと同じ弦で、暖かく軟らかい音がします。
Academy Seriesの特徴
各モデルのスペックを踏まえた上で、ここからアカデミー・シリーズならではの弾きやすさにこだわった機能性について解説していきます。
結論から言うと、以下の3点になります。
- 握りやすい「ナット幅」
- 絶妙な長さの「ネック・スケール」
- 長時間弾いても疲れない「アームレスト」
握りやすい「ナット幅」
対象機種:Academy 10 / Academy 10e / Academy 12 / Academy 12e
ナット幅とは、ギターのヘッドと指板の間にあるパーツをナットと呼び、その幅のことを指します。
アカデミー・シリーズのナット幅は、42.9mmです。
テイラーの定番シリーズで採用されている標準のナット幅は44.5mm。
その差はわずか1.6mmですが、握った感覚はかなり違います。
ネック幅が細いことで、握りやすく、コードチェンジもしやすいというメリットがあります。
ちなみに、Taylorの100・200シリーズも、アカデミー・シリーズと同じナット幅を採用しているので、初めての1本やステップアップのための2本目として、よく選ばれています。
Taylorのベストセラー!初心者にオススメの100・200シリーズを徹底解剖
絶妙な長さの「ネック・スケール」
対象機種:Academy 10 / Academy 10e / Academy 12 / Academy 12e
ナット幅と同じく、弾きやすさの重要なポイントとなるのが、スケールです。
スケールとは、ネックの長さのこと。
アカデミー・シリーズのスケールは631.8mmのショートスケールを採用しています。
通常のテイラーのシリーズだと、その長さは647.7mm。
スケールが短いことで、弦を張る長さも必然的に短くなります。
そうすることで、弦の張力が弱くなり、押さえやすくなるのです。
長時間弾いても疲れない「アームレスト」
対象機種:全モデル
アカデミー・シリーズの最大の特徴が、ボディの右腕の当たる部分に施されたアームレストです。
「taylorguitars.com」より引用
一般的に、アコギを長時間弾いていると、ボディの角に触れている右腕が痛くなります。
アームレストは、ボディの右腕が触れる箇所をカットし、そこに斜めに板を貼り付けたもの。
これがあるだけで、長時間の演奏でも右腕が痛くなりません。
さらに、腕を上げる角度が浅くなるので、弾きやすさも向上します。
このアームレストは、定番シリーズには搭載されておらず、ビルダーズ・エディション(Builder’s Edition)やプレゼンテーション・シリーズ(Presentation Series)といった上位モデルに採用されています。
それらと同じ機能をエントリーモデルであるアカデミー・シリーズにも採用しているということで、テイラーの初心者に寄り添う姿勢が見て取れます。
これぞTaylorの真骨頂!?Builder’s Editionについて分かりやすく解説してみた
Academy Seriesのスペック解説
ここからは、アカデミー・シリーズのスペックを読み解く上で必要な情報をまとめています。
自分の演奏スタイルに合わせたモデルを選ぶ参考にしてください。
ボディ・シェイプについて
ボディ・シェイプとは、ボディの形状のこと。
アカデミー・シリーズには2種類のボディ・シェイプが採用されており、形状の違いで抱え心地が変わるだけでなく、サウンドにも違いが出てきます。
ドレッドノート(DN)
対象機種:Academy10 / Academy 10e
ドレッドノートは、アコースティックギターでは定番のボディ・シェイプです。
全体のサイズは大きく、厚みもあるので、最初は弾きにくく感じるかもしれません。
ただ、それにより大きなサウンドを得ることができるので、ストロークを中心とした演奏スタイルなら、こちらの形状がおすすめです。
グランド・コンサート(GC)
対象機種:Academy12 / Academy 12e / Academy 12-Nylon / Academy 12e-Nylon
グランド・コンサートは、Taylor独自のボディ・シェイプで、コンパクトなサイズ感が人気の形状です。
ボディの厚みも薄いので、より体に引き寄せて弾くことができます。
フィンガーピッキングをする人には、こちらの形状がおすすめです。
トーンウッドについて
トーンウッドとは、楽器に使われる木材の総称です。
ギターは主に、トップとサイド&バックで異なる材を使用しています。
シトカ・スプルース
対象機種:Academy 10 / Academy 10e / Academy12 / Academy 12e
スチール弦のモデルのトップに使用されているのは、シトカ・スプルース(Sitka Spruce)という材。
「taylorguitars.com」より引用
アコギでは定番の材のひとつで、いわゆる“松の木”です。
その特徴は、軽く軟らかですが、適度な弾力があり、弦の振動をうまく音に変換するのに適した材となっています。
ルッツ・スプルース
対象機種:Academy 12-Nylon / Academy 12e-Nylon
ナイロン弦モデルのトップに使用されているのはルッツ・スプルース(Lutz Spruce)という材。
「taylorguitars.com」より引用
ルッツ・スプルースは、カナダの一部の地域で採れる木材です。
弾力性があり、パワフルでボリュームのあるサウンドが特徴で、フィンガーピッキング向けのギターに採用されることが多い材となっています。
レイヤード・サペリ
対象機種:全モデル
全てのモデルのサイド&バック材として採用されているのは、サペリという材。
「taylorguitars.com」より引用
主にアフリカの赤道付近に分布する広葉樹で、明るくクリアで、歯切れのいいサウンドが特徴です。
テイラーでは定番の300シリーズに使用されていて、低音域から高音域までバランスが取れていることから、アカデミー・シリーズでも採用されているのではと推測されます。
ピックアップについて
対象機種:Academy10e / Academy 12e / Academy12e-Nylon
型番の数字に「e」がついているものは、ピックアップ付きのモデルです。
「Taylor公式HP」より引用
ピックアップとは、ギターの音を外部へ出力するためのもので、アンプに接続することで大音量が必要な場面(ステージなど)で活躍します。
コンクールやライブで使用したいという人はピックアップを使う確率が高いので、型番に「e」が付いたモデルを選んでください。
さらに、アカデミー・シリーズに付いているピックアップにはチューナーが搭載されています。
わざわざ別売りのチューナーを買わなくても、ギターだけでチューニングをすることが可能になっています。
こうした細かい気配りは、初心者にとっては嬉しい仕様です。
価格について
それに伴い、下の価格表も書き換えましたので以前読まれた方は注意してください。
メーカー希望小売価格 | 実売参考価格 | |
Academy 10 | ¥143,000 | ¥114,400 |
Academy 10e | ¥176,000 | ¥140,800 |
Academy 12 | ¥143,000 | ¥114,400 |
Academy 12e | ¥176,000 | ¥140,800 |
Academy 12-Nylon | ¥154,000 | ¥123,200 |
Academy 12e-Nylon | ¥187,000 | ¥149,600 |
テイラーは販売価格が安定しており、全国的に一律の価格設定ですが、小さな打痕や引っかき傷のある在庫だと新品特価で売り出される時があります。
ちょっとした傷なら気にしないという人は、10万円以下で手に入れることもできるので、そうしたアウトレット品も狙い目です。
まとめ
アカデミー・シリーズは、テイラーの「初心者にとって弾きやすいギターとは何か」という自問に対する答えがギュッと詰まったモデルです。
機能性を重視しながらもサウンドに妥協せず、必要最低限の剛性を備えギリギリまでコストを抑える・・・。
こうした企業努力によって生まれたこのシリーズは初心者のみならず上級者にも支持されています。
初めての1本に是非、このシリーズを候補に入れてみてください。