2020年に発表されたテイラー(Taylor)の新シリーズ「アメリカン・ドリーム」(American Dream)、通称ADシリーズ。
「taylorguitars.com」より引用
オール単板でV-Classブレーシングを採用、さらにアメリカ製と、上位モデル並のスペックを盛り込んでいながら低価格路線・・・。
日本では、2021年から店頭販売が開始され、各モデルの試奏が可能になっています。
当ブログでは、このシリーズが発表されてから「初心者にオススメの最有力候補か!?Taylorの新シリーズ「American Dream」を徹底解剖!」という記事でファーストインプレッションを述べましたが、今回は実際に試奏した上での気づきを紹介。
このシリーズが、どんな人におすすめなのか考察します。
ずばり、American Dreamは・・・
このシリーズ全体に言えることですが、初心者が最初の1本を選ぶならこれがオススメです。
その理由は後ほど述べるとして・・・
簡単に羅列すると次の通りです。
- とにかく弾きやすいボディ・シェイプ
- 少ない握力でもノイズの少ない太ネック
- 取り回しが楽々♪軽量ボディ
- V-Classブレーシングによるテイラーらしいサウンド
- 安い!
上記はまさに試奏してみないと分からない部分ですので、近くに取扱店がない人には有益な情報ではないかと思います。
ADシリーズの特徴
ADシリーズは、テイラーのシリーズ別のランクでは「普及促進」に位置し、価格を抑えながらもテイラーらしいサウンドを手に入れたい人に向けたモデルとなっています。
そんなADシリーズの特徴は以下の通り。
- 2種類のボディ・シェイプが選べる
- 取り回し楽々♪軽量ボディ
- V-Classブレーシングによるテイラーらしいサウンド
2種類のボディ・シェイプが選べる
ボディ・シェイプとは、いわゆるボディの形状のこと。
テイラーには6つのオリジナル・シェイプがあり、ADシリーズでは「GC」「GP」の2つがラインナップされています。
以下で各シェイプの特徴を簡単に紹介します。
グランド・コンサート(GC)
対象モデル : AD22e
グランド・コンサート(Grand Concert)、通称GCはマーチンの00(ダブルオー)に近いサイズ感で、女性や小柄な男性に人気の形状です。
ボディの厚みも薄く、より身体に引き寄せて弾くことができるので、エレキ弾きやフィンガー・ピッカーに選ばれる傾向があります。
グランド・パシフィック(GP)
対象モデル : AD17 / AD17e / AD17 Blacktop / AD17e Blacktop / AD27 / AD27e / AD27e Flametop
グランド・パシフィック(GP)は2019年に発表された形状で、アコギの定番であるドレッドノートのテイラー版です。
一般的にドレッドノートはボディに厚みがあり、いわゆる箱鳴りがしやすい形状ですが、GPは薄ボディなので、より体に引き寄せて弾くことができます。
薄ボディですが、倍音が効いていて、低音域と高音域が前面に出てくるボリュームのあるサウンドが特徴。
弾きやすさと、ボリュームのあるサウンドを両立させた形状となっています。
取り回し楽々♪軽量ボディ
ADシリーズを店頭で手に取った第一印象は「軽!」
「taylorguitars.com」より引用
公式のスペックでは、重量は公表されていませんが、こちらの記事では、AD27が1.58kg、AD17Blacktopが1.81kgとなっています。
比較として、僕が所有するGPシェイプのBuilder’s Edition 717eは2.35kgでした。
ストラップを付けて長時間演奏する人にとってはありがたい軽さです。
V-Classブレーシングによるテイラーらしいサウンド
ブレーシングとは、「力木」(ちからぎ)と呼ばれる、ギターの内側(トップとバック)に張られた棒状の材のこと。

「Taylor公式HP」より引用
このブレーシングには2つの役割があります。
1つ目は「ボディの強度を上げる」こと。
2つ目は「振動を正しくボディに伝える」こと。
テイラーでは、この2つの役割を両立させるため、2018年に独自のブレーシング構造を開発。
それが、上の画像のようにメインの骨組みが左右対称に「V」(ヴイ)状に張られたV-Classブレーシング。
一般的に、ブレーシングは下の画像のようにX(エックス)状に張られたXブレーシングが永らく市場のスタンダードでした。

「NEW ATALAS」より引用
V-ClassブレーシングはXブレーシングと比べて、音の分離やサスティーンが劇的に改善されています。
これまでV-Classブレーシングは、上位シリーズである300番台以降でしか採用されていませんでした。
ADシリーズはエントリーモデルながら、このV-Classブレーシングを採用。
前手の記事でも言及しましたが、このシリーズはテイラーが“本気”で普及させようとしていると考察できます。
ADシリーズのラインナップ
2022年7月現在、ADシリーズには8つのモデルがランナップされています。
- AD22e
- AD17 / AD17e
- AD17 Blacktop / AD17e Blacktop
- AD27 / AD27e
- AD27e Flametop
AD22e |
ボディ・シェイプ | グランド・コンサート |
トップ材 | マホガニー |
サイド&バック材 | サペリ |
ネック材 | トロピカル・マホガニー |
フレットボード材 | ユーカリ |
ブレーシング | V-Class |
ピックアップ | ES2 |
AD22eはシリーズ唯一のGCボディ。
トップにマホガニー、サイド&バックにサペリを採用し、暖かみのあるサウンドが特徴です。
AD17 / AD17e |
ボディ・シェイプ | グランド・パシフィック |
トップ材 | シトカ・スプルース |
サイド&バック材 | オヴァンコール |
ネック材 | トロピカル・マホガニー |
フレットボード材 | ユーカリ |
ブレーシング | V-Class |
こちらのAD17 / AD17eは、トップ材にスプルース、サイド&バック材にオヴァンコールを採用したモデル。
材の組合わせとしては、旧400シリーズと同じになります。
AD17 Blacktop / AD17e Blacktop |
ボディ・シェイプ | グランド・パシフィック |
トップ材 | シトカ・スプルース |
サイド&バック材 | オヴァンコール |
ネック材 | トロピカル・マホガニー |
フレットボード材 | ユーカリ |
ブレーシング | V-Class |
こちらはトップ材をブラックに塗装したモデル。
その他は、AD17 / AD17eと同じスペックになります。
AD27 / AD27e |
ボディ・シェイプ | グランド・パシフィック |
トップ材 | マホガニー |
サイド&バック材 | サペリ |
ネック材 | トロピカル・マホガニー |
フレットボード材 | ユーカリ |
ブレーシング | V-Class |
AD27 / AD27eは、トップ材にマホガニー、サイド&バック材にサペリという組み合わせ。
AD22eとの違いはボディ・シェイプだけなので、抱えやすいほうを選ぶといいかと思います。
AD27e Flametop |
ボディ・シェイプ | グランド・パシフィック |
トップ材 | ビッグ・リーフ・メイプル |
サイド&バック材 | ビッグ・リーフ・メイプル |
ネック材 | ハード・ロック・メイプル |
フレットボード材 | ユーカリ |
ブレーシング | V-Class |
ピックアップ | ES2 |
AD27e Flametopはテイラー初のトップにメイプル材を採用したモデル。
これまでのテイラーらしいサウンドとは一線を画した輪郭がハッキリした音作りとなっています。
TaylorのAD27e Flametopをレビュー!史上初のオールメイプル仕様
コストカットした部分も・・・
ここからは通常のテイラーのモデルと比べてコストカットしている部分を紹介します。
これをデメリットと捉えるかは、その人次第と言えますが・・・。
バインディングなし
バインディングとは、ボディの角に沿って接着された“縁”のこと。
Builder’s Edition 614ceのバインディング(トップとサイドの間の色が変わっている部分)
これはほとんどのギターに付いているものですが、ADシリーズにはついていません。
その代わりにボディエッジを丸く面取りしています。
「Taylor公式HP」より引用
通常、アコギ(エレアコ)はトップとサイド、バックのつなぎ目はほぼ直角に接合されています。
ADシリーズでは抱えやすさを重視し、ボディ全体が丸みを帯びているので、長時間抱えた際のストレスが軽減されています。
ライニングが簡易的
ライニングとはサイド材と、トップ材・バック材を接着する際の接着面を稼ぐために取り付けられるパーツのこと。
いわゆる「のりしろ」です。
ライニングはアコギ(エレアコ)の製造には欠かせない部品ですが、ここにもコストカットしたであろう痕跡が。
下の写真の、左はAD17e、右はBuilder’s Edition 717eのボディ内の写真です。
右のBE717eは細かく切れ目を入れて蛇腹に加工してあるのに対し、左のAD27eは切りっぱなしです。
これが強度やサウンドにどう影響を与えるかは不明ですが、一般的にライニングは蛇腹が主流です。
切れ目を入れる工程を減らすことでコストカットを図っているものと思われます。
これらは同じくエントリーモデルである100・200シリーズも同様の処理になっています。
尚、写真のブレーシングの端がBE717eはライニングまで届いているのに対して、AD27eは途中で止まっています。
実はテイラーは材の特性に合わせてブレーシングの長さを微調整しており、600シリーズなども同じような構造です。
Builder’s Edition 614ceのブレーシング(ライニングは蛇腹だけど、ブレーシングは届いていない。)
そのため、こちらについてはコストカットではないと思われます。
価格について
それに伴い、下の価格表も書き換えましたので以前読まれた方は注意してください。
ADシリーズはアメリカ製のテイラーを手頃な価格で提供することを目的に開発されたシリーズです。
日本での販売価格も300シリーズ以上のモデルと比べて安価になっています。
メーカー希望小売価格 | 実売参考価格 | |
AD22e | ¥396,000 | ¥316,800 |
AD17 |
¥357,500 | ¥286,000 |
AD17e |
¥396,000 | ¥316,800 |
AD17 Blacktop |
¥412,500 | ¥330,000 |
AD17e Blacktop |
¥451,000 | ¥360,800 |
AD27 |
¥357,500 | ¥286,000 |
AD27e |
¥396,000 | ¥316,800 |
AD27e |
¥506,000 | ¥404,800 |
ちなみに、同じGPシェイプの317eは実売価格で約38万円です。
まとめ
冒頭でも書きましたが、ADシリーズは初心者が最初の1本として買うのに相応しいスペックです。
- 2種類のボディ・シェイプが選べる
- 取り回し楽々♪軽量ボディ
- V-Classブレーシングによるテイラーらしいサウンド
特にV-Classブレーシングを搭載したモデルとしては最安値なので、せっかくテイラーを買うなら是非このシリーズをおすすめします。