ベイビーテイラー(Baby Taylor)は1996年にテイラー(Taylor)から発表されたミニギターです。
Image : Taylor
それまでは子供のオモチャとしてのミニギターはありましたが、大人も使える本格的なものは皆無でした。
ベイビーテイラーは、そこに風穴を開ける存在して登場以来、高い評価を受けています。
そんなベイビーテイラーには4つの種類、ピックアップ(PU)の有無を含めると7モデルがラインナップされています。
ポン
この記事は、そんな人に向けてベイビーテイラーの特徴から、各モデルの違いを解説。
購入の参考になれば幸いです。
Baby Taylorのラインナップ
先述した通り、ベイビーテイラーには7つのモデルが存在します。
- Baby Taylor (BT1)
- Baby Taylor-e (BT1e)
- Baby Taylor Mahogany (BT2)
- Baby Taylor-e Mahogany (BT2e)
- Baby Taylor-e Koa (BT-e Koa)
- Taylor Swift Baby Taylor (TSBT)
- Taylor Swift Baby Taylor-e (TSBTe)
この内、モデル名に「-e」が付いているのがピックアップ付きのエレアコ仕様です。
その他、主な違いはボディに使われている材の種類。
それぞれトップとサイド&バックに使われている材の組み合わせが違い、それによってサウンドにも違いがあります。
Baby Taylor / Baby Taylor-e |
ボディ・シェイプ | ドレッドノート |
トップ材 | シトカ・スプルース |
サイド&バック材 | レイヤード・ウォルナット |
ネック材 | メイプル |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | X |
ピックアップ | ES-B(PU付きモデルのみ) |
Baby Taylor(BT1)は1996年に発売したベイビーシリーズの第一弾モデル。(PU付きは2015年)
発売時はサイド&バックがサペリ(Sapele)という材でしたが、2020年にウォルナット(Walnut)に仕様変更されています。
Baby Taylor Mahogany / Baby Taylor-e Mahogany |
ボディ・シェイプ | ドレッドノート |
トップ材 | トロピカル・マホガニー |
サイド&バック材 | サペリ |
ネック材 | トロピカル・マホガニー |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | X |
ピックアップ | ES-B(PU付きモデルのみ) |
Baby Taylor Mahogany (BT2) / Baby Taylor-e Mahogany (BT2e)はトップ材にマホガニー(Mahogany)を採用したモデル。
ネック材もベイビーテイラーで唯一、フルサイズと同じマホガニーを使用しています。
Baby Taylor-e Koa |
ボディ・シェイプ | ドレッドノート |
トップ材 | ハワイアン・コア |
サイド&バック材 | ハワイアン・コア |
ネック材 | メイプル |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | X |
ピックアップ | ES-B |
Baby Taylor-e Koa (BT-e Koa)は2017年に登場したオールコアモデル。
一時期、生産終了していましたが、その人気から2019年に再登場した売れ筋モデルです。
尚、こちらはピックアップ付き(エレアコ仕様)のみとなっています。
Taylor Swift Baby Taylor / Taylor Swift Baby Taylor-e |
ボディ・シェイプ | ドレッドノート |
トップ材 | シトカ・スプルース |
サイド&バック材 | サペリ |
ネック材 | サペリ |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | X |
ピックアップ | ES-B(PU付きモデルのみ) |
こちらは世界的に著名なアーティスト、テイラー・スウィフトのシグネチャーモデル。
本人がデザインを草案した花柄のロゼットに、直筆のサインがプリントされています。
Baby Taylorの特徴
ここからは僕が使って感じたベイビーテイラーの主な特徴から、その人気の理由を深堀りしていきます。
- 3/4サイズなのに驚きのサウンド
- アコギの定番シェイプを採用
- 剛性の高い合板ボディ
- オリジナルのピックアップを搭載
3/4サイズなのに驚きのサウンド
ベイビーテイラーのサイズは、一般的なアコギの4分の3です。
とは言え、ただミニサイズにしたわけではなく、ギターとしての“鳴り”を重視した専用設計となっています。
例えば、サンドホールから内部を覗くと、通常のギターにあるはずのバック・ブレーシングがありません。
通常、ボディのサイズが小さくなれば、比例して“鳴り”も小さくなります。
ベビーテイラーはボディ内部の空洞体積を稼ぐため、あえてバック・ブレーシングを廃しているのです。
さらに、バックを膨らませ低音の響きを増幅する構造を採用。(アーチドバック)
そのサウンドは他のミニギターと比べ物にならないくらい本格的なものとなっています。
アコギの定番シェイプを採用
シェイプとは、ギターのボディ形状のこと。
ベイビーテイラーは「ドレッドノート」という形状を採用しています。
「taylorguitars.com」より引用
ドレッドノートはマーチン(Martin)社が開発し、アコースティックギターでは定番中の定番とも言える形状。
テイラーに限らず、ほどんどのギターメーカーがドレッドノートタイプのギターを作っています。
その特徴は、大音量を稼ぐことができること。
ベイビーテイラーも小さいながらも“鳴り”を重視する設計のため、ドレッドノートタイプを採用しているというわけです。
剛性の高い合板ボディ
ベイビーテイラーのシリーズに共通するスペックのひとつに・・・
トップ : 単板
サイド&バック : 合板
という特徴が挙げられます。
トップに使われている「単板」は、木材をそのまま切り出した一枚板のこと。
Baby Taylorのトップ。断面の木目が繋がっているのが分かる。
サイド&バックに使われている「合板」は、ベニア板のように薄くスライスした木材同士を重ねて圧着させた板のことを指します。
Baby Taylorのバックの断面。よく見ると3層構造(レイヤード)になっている。
一般的に、アコギは高級(高額)になるほどオール単板になります。
合板は切断や曲げなどの加工がしやすいこともあり、比較的、低価格のモデルに使用されます。
“鳴り”の面では、合板よりも単板のほうが鳴りが良いとされますが・・・
合板のメリットは、剛性が高く、多少荒く扱っても壊れにくいこと。
温度や湿度の変化にも強く、ピッチが狂いにくいのも特徴です。
こうした材の構成で、ミニギターとしての弱点を克服している点もベイビーテイラーの強みと言えます。
アコギの単板と合板の違いは?シリーズ別の見分け方も紹介【Taylor】
オリジナルのピックアップを搭載
対象モデル : Baby Taylor-e / Baby Taylor-e Mahogany / Baby Taylor-e Koa / Taylor Swift Baby Taylor-e
型番に「-e」がついているモデルは、ピックアップ付き(エレアコ)です。
ピックアップ(PU)とは、ギターの音を外部へ出力するためのもので、アンプに接続することで大音量が必要な場面(ステージなど)で活躍します。
ベビーテイラーに搭載しているPUの特徴は、チューナー機能が付いていること。
わざわざ別売りのチューナーを買う必要がない、嬉しい仕様となっています。
尚、このPUはボタン電池(CR2032×2個)で動作する仕様となっています。
ミニギターなのに本格的なつくり
上記の特徴の他にも、ベイビーテイラーが本格的なミニギターであることが細かいつくりに見て取れます。
例えばネックは、割れにくく、ねじれにも強い追柾目(おいまさめ)を使用。
断面の筋が斜めに入っているのが追柾目の証拠。
指板も強度のあるエボニー(黒壇)を使っています。
ネックの反りを調整できるトラスロッドも搭載。
こうした細部へのこだわりは弾きやすさに直結します。
これだけでも一般的な安物ギターとは一線を画していることが分かりますね。
専用のギグバッグが付属
ベイビーテイラーには専用のギグバッグが付属します。
「taylorguitars.com」より引用
内部にはクッションが配されていて、外側にはアクセサリーを入れられるポケットも付いています。
「taylorguitars.com」より引用
ちなみにハードケースが欲しい人には、純正ではないですがSKBというメーカーから専用のハードケースが発売されています。
推奨弦はエリクサー
ベイビーテイラーの工場出荷時に張られている弦はエリクサー(Elixir)の「フォスファーブロンズ・ナノウェブ・ミディアム(Phosphor Bronze NANOWEB Medium)」です。
数ある弦の中でテイラーがエリクサーを推奨する理由は「長持ちするから」
一般的なメーカーの弦は1ヶ月ほどで錆び始めますが、エリクサーは、その2〜3倍は持つと言われています。
その理由は、弦を極薄の膜でコーティングしているから。
「elixirstrings.jp」より引用
このコーティングが湿気や汗など、皮膚に付着した汚れから弦を守ることで、サウンドの劣化を防いでいます。
最近は他メーカーでもコーティング弦が発売されていますが、実は弦をまるごとコーティングしているのはエリクサーだけです。
まるごとコーティングはエリクサーの特許技術なので、他メーカーは真似できないというわけです。
他メーカーは、巻弦の隙間はコーティングしていないので、その隙間から劣化が始まると言われています。
僕もいろんなメーカーの弦をテイラーに張って試してきましたが、今のところエリクサーで落ち着いています。
【Taylor】工場出荷時に張っている弦まとめ【Elixir / D’Addario】
価格について
ベイビーテイラーは実勢売価で10万円を切る価格が魅力でしたが、2022年に値上がりし、一部モデルは10万円を超えています。
メーカー希望小売価格 | 実勢売価 | |
BT | ¥96,800 | ¥77,440 |
BT-e | ¥121,000 | ¥96,800 |
BT Mahogany | ¥105,600 | ¥84,480 |
BT-e Mahogany | ¥129,800 | ¥103,840 |
BT-e Koa | ¥167,200 | ¥133,760 |
Taylor Swift BT | ¥105,600 | ¥84,480 |
Taylor Swift BT-e | ¥129,800 | ¥103,840 |
ショップによっては旧売価で出しているところもあるので、早めの購入がおすすめです。
中古も狙い目
度重なる値上げで、手軽に購入するには気が引けてしまう・・・
という人には中古という手段があります。
中古市場の相場は3〜5万円です。
程度の良いものであれば即購入したほうがいいでしょう。
アメリカ製とメキシコ製がある
ベイビーテイラーにはアメリカ製とメキシコ製が存在します。
と言っても、現在生産している個体はすべてメキシコ製です。
アメリカ製は1996〜2005年までに製造されたもので「Baby Taylor 301」(サペリ)、「Baby Taylor 301-M」(マホガニー)という型番で流通しています。
近年製造された個体よりも頑丈に作られていて、ボディ内部に反響板が付いているので、より鳴りを重視したつくりとなっています。
さらに純正のハードケースが付属しているので、希少価値が高く、わざわざ探し求めて買う人もいるくらい人気のある個体です。
まとめ
ベイビーテイラーは取り回しの良さから、リビングで爪弾きたい人や旅ギターとしての需要も高く、僕も1日のうち何度も手にとって弾いています。
正直なことを言うと、ベイビーテイラーは「最初の1本」よりも、2本目、3本目として買ったほうが魅力が分かるギターだと思います。
まあ、でも、初心者の最初の1本としてのポテンシャルもあるので、誰が弾いても弾きやすいギターであることには変わりないと思います。
安物のミニギターだと1万円以下で買えるものもありますが、弾きやすさという点では雲泥の差があるので、是非、試奏してみることをおすすめします。