ビルダーズ・エディション(Builder’s Edition)は、2018年にテイラー(Taylor)から発表された次世代モデルです。
「Taylor公式HP」より引用
定番の3桁シリーズ(300〜900番台)に弾き心地を追求した機能を盛り込み、サウンドと共にグレードアップさせた“特別仕様”のギターで、僕はビルダーズ・エディションとの出合いがテイラーにハマるきっかけとなりました。
アコースティックギターの概念を変える「革命」と言っても過言ではないと思っています。
この記事では、そんなビルダーズ・エディションのスペックや特徴を紹介&解説。
使用感なども伝えていきたいと思います。
Builder’s Editionの立ち位置
下の図は、テイラーが展開するシリーズをグレード別に分けたピラミッドです。
ビルダーズ・エディションは、上から2番目に位置し、定番の3桁シリーズやコア(Koa)・シリーズの上位版になります。
ちなみに最上位は、ハイグレードな材を贅沢に使ったプレゼンテーション・シリーズ(Presentation Series)。
日本での実売価格は軽く100万円を超える、とんでもないやつです・・・。
ビルダーズ・エディションは、その真下に位置しますが、PSシリーズと同等の機能を要しながらも50万円代〜と、決して買えない価格帯ではないです。
価格の詳細については後述しますが、これから紹介するスペックと照らし合わせても買う価値のあるモデルだと思います。
Builder’s Editionのラインナップ
ビルダーズ・エディションには9つのモデルがあります。
- Builder’s Edition K14ce
- Builder’s Edition K24ce
- Builder’s Edition 614ce
- Builder’s Edition 324ce
- Builder’s Edition 652ce
- Builder’s Edition 912ce
- Builder’s Edition 816ce
- Builder’s Edition 717e
- Builder’s Edition 517e
特徴や機能性はモデルごとに様々ですが、大きくボディ・シェイプくくりで紹介していきます。
ボディ・シェイプって何?
という方は、下の記事で詳しく解説していますので、見てみてください。

グランド・オーディトリアム(Grand Auditorium)
Builder’s Edition K14ce |
ボディ・シェイプ | グランド・オーディトリアム |
トップ材 | トレファイド・シトカ・スプルース |
サイド&バック材 | ハワイアン・コア |
ネック材 | トロピカル・マホガニー |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | V-Class |
ピックアップ | ES2 |
BE K14ceは、2018年にビルダーズ・エディションの第一弾として発表されたモデル。
トップ材にトレファイド加工されたシトカ・スプルース、サイド&バック材には、Taylorの代名詞とも言えるハワイアン・コアを使用したビルダーズ・エディションの最上位モデルです。
Builder’s Edition K24ce |
ボディ・シェイプ | グランド・オーディトリアム |
トップ材 | ハワイアン・コア |
サイド&バック材 | ハワイアン・コア |
ネック材 | トロピカル・マホガニー |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | V-Class |
ピックアップ | ES2 |
BE K24ceはトップ材、サイド&バック材にハワイアン・コアを使用した、オールコアモデル。
BE K14ceと比べて暖かみのある甘いサウンドが特徴で、弾き込む度に音に深みが増す、変化を楽しむには最適の一本です。
Builder’s Edition 614ce |

ボディ・シェイプ | グランド・オーディトリアム |
トップ材 | トレファイド・シトカ・スプルース |
サイド&バック材 | メイプル |
ネック材 | ハードロック・メイプル |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | V-Class |
ピックアップ | ES2 |
BE 614ceはビルダーズ・エディションの第二弾として発表されたモデル。
BE K14ceと同様、トレファイド加工されたシトカ・スプルースに、透明感のあるサウンドを奏でるメイプルをサイド&バック材に使用しています。
BE 614ceは、ナチュラルとワイドハニーバーストの2色展開となっています。
Builder’s Edition 324ce |
ボディ・シェイプ | グランド・オーディトリアム |
トップ材 | トロピカル・マホガニー |
サイド&バック材 | アーバン・アッシュ |
ネック材 | トロピカル・マホガニー |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | V-Class |
ピックアップ | ES2 |
BE 324ceはビルダーズ・エディションの中で最安値のモデルです。
サイド&バックに使用されているアーバン・アッシュは、このモデルで初めて採用された材で、米・カリフォルニアの街路樹として植樹されたメキシコ産の木を利用しています。
マホガニーのようなサウンドが好みの人にオススメです。
グランド・コンサート(Grand Concert)
Builder’s Edition 652ce |
ボディ・シェイプ | グランド・コンサート |
トップ材 | トレファイド・シトカ・スプルース |
サイド&バック材 | メイプル |
ネック材 | ハードロック・メイプル |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | V-Class |
ピックアップ | ES2 |
こちらは2020年に発表された12弦ギターのBE 652ce。
一般的な12弦ギターと違い、主弦と副弦が逆に張っているので、ダウンストロークがより豊かで肉厚なサウンドになるという特別仕様のモデルです。
さらに、1つのブリッジピンで2本の弦を固定するダブルマウントを採用し、イントネーションもすっきりとしています。
このモデルはナチュラルとワイドハニーバーストの2色展開です。
Builder’s Edition 912ce |
ボディ・シェイプ | グランド・コンサート |
トップ材 | ルッツ・スプルース |
サイド&バック材 | インディアン・ローズウッド |
ネック材 | トロピカル・マホガニー |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | V-Class |
ピックアップ | ES2 |
BE 912ceも2020年に発表されたモデルです。
900シリーズは、定番3桁シリーズでは最もグレードの高い材を使用しています。
このモデルは、後述するビルダーズ・エディションならでは機能を盛り込むことで、更に演奏性を向上させています。
こちらもナチュラルとワイドハニーバーストの2色展開となっています。
グランド・シンフォニー(Grand Symphony)
Builder’s Edition 816ce |
ボディ・シェイプ | グランド・シンフォニー |
トップ材 | ルッツ・スプルース |
サイド&バック材 | インディアン・ローズウッド |
ネック材 | トロピカル・マホガニー |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | V-Class |
ピックアップ | ES2 |
BE 816ceは、これまでのグランド・シンフォニーを一新させた、リニューアルの第一弾モデルです。
最大の特徴は、カッタウェイのある場所に施された、もうひとつのサウンドホール、通称「サウンドポート」。
これがあることで、鳴らした時にまるでステレオスピーカーで聴くような独特のサウンドになります。
グランド・パシフィック(Grand Pacific)
Builder’s Edition 717 / 717e |
ボディ・シェイプ | グランド・パシフィック |
トップ材 | トレファイド・シトカ・スプルース |
サイド&バック材 | インディアン・ローズウッド |
ネック材 | トロピカル・マホガニー |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | V-Class |
ピックアップ | ES2 |
こちらはグランド・パシフィックの第一弾モデルとして2019年に発表されたBE 717e。
テイラー版のドレッドノートとも言えるGPに、スプルースとローズウッドという組み合わせは、もはやアコースティックギターの定番です。
サウンドも従来のアコギの鳴りに近く、伝統的なトーンを好む人にオススメです。
こちらのモデルは、ナチュラルとワイドハニーバーストの2色展開に加え、PUあり/なしの4種類がラインナップされています。
Builder’s Edition 517 / 517e |
ボディ・シェイプ | グランド・パシフィック |
トップ材 | トレファイド・シトカ・スプルース |
サイド&バック材 | トロピカル・マホガニー |
ネック材 | トロピカル・マホガニー |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | V-Class |
ピックアップ | ES2 |
こちらはBE 717eと同時に発表されたサイド&バック材にマホガニーを使用したモデルです。
僕はこのスペックを見た瞬間「明らかにGibsonに対抗しようとしてるやん」とつぶやいてしまいました。笑
ラウンドショルダーのボディ・シェイプに、スプルースとマホガニー・・・どう見てもJ-45です。笑
でも実際に弾いてみると、Gibsonよりも洗練されたテイラーらしいサウンド。
このモデルも、ナチュラルとワイドハニーバーストの2色展開、PUなしのモデルもラインアップされています。
Builder’s Editionの特徴
ここからはビルダーズ・エディションの“売り”である、「弾き心地を追求した」機能について解説していきます。
ベベルド・アームレスト
対象モデル:BE K14ce / BE K24ce / BE 324ce / BE 614ce / BE 652ce / BE 912ce
「Taylorguitars.com」より引用
ビルダーズ・エディションの最大の特徴が、ベベルド・アームレストです。
これはアコギあるあるだと思いますが・・・
アコギを長時間弾いていると、ボディの角に触れている右腕が痛くなる経験をしたことがある人は多いと思います。
アームレストはボディの右肘が当たる箇所をカットし、そこに斜めに板を貼り付けたものですが、これがあるだけで長時間の演奏でも右腕が痛くなりません。
さらに、腕を上げる角度が浅くなるので、弾きやすさも向上しています。
ちなみに、定番の800・900シリーズにもアームレストが付いています。
※800シリーズは2020年のリニューアルモデルから搭載
「Taylorguitars.com」より引用
こちらのアームレストは「ラディウス・アームレスト」と言って、ベベルド・アームレストと比べて板の面積が少し狭くなっています。
演奏の快適性という面ではラディウスもいいですが、僕はベベルドの方が弾きやすいと感じました。
ラウンド・ボディ・エッジ
対象モデル:全モデル
「Taylor公式HP」より引用
ビルダーズ・エディションは、全モデル、ボディの角が丸みを帯びています。
アコギ(エレアコ)は、ボディのエッジが立っているのが一般的です。
ビルダーズ・エディションは、その角を丸く面取りしたラウンド・ボディ・エッジを採用。
ギターが抱えやすくなり、特にサイズの大きなモデルは、コンパクトに感じるはずです。
ベベルド・カッタウェイ
対象モデル:BE K14ce / BE K24ce / BE 614ce / BE 324ce / BE 652ce / BE 912ce
「Taylor公式HP」より引用
こちらのカッタウェイ部分も、アームレストと同様に、角を大きくえぐり傾斜をかけたベベルド仕様になっています。
これがあることで、ハイポジションで弦を押さえる際、親指の位置を変える必要がないので、スムーズに演奏することができます。
サイレント・サテン・フィニッシュ
対象モデル:全モデル
「Taylor公式HP」より引用
定番の3桁シリーズはグロス・フィニッシュですが、ビルダーズ・エディションでは、極薄塗装のサイレント・サテン・フィニッシュが採用されています。
これは、録音時に服が擦れる摩擦音が出にくい塗装で、シビアな現場で重宝される仕様です。
日常の演奏でも、特に夏場は半袖でグロス仕様のギターを弾くと汗でベタつき不快になる場面に遭遇しますが、サイレント・サテンはすべすべしているので快適です。
価格について
それに伴い、下の価格表も書き換えましたので以前読まれた方は注意してください。
ビルダーズ・エディションは定番3桁シリーズの上位版ということもあり、価格はかなり高めの設定です。
下の表は、各モデルのメーカー希望小売価格と店頭実売になります。
メーカー希望小売価格 | 実売参考価格 | |
BE K14ce | ¥1,265,000 | ¥1,012,000 |
BE K24ce | ¥1,320,000 | ¥1,056,000 |
BE 614ce | ¥946,000 | ¥756,800 |
BE 614ce WHB | ¥946,000 | ¥756,800 |
BE 324ce | ¥704,000 | ¥563,200 |
BE 652ce | ¥979,000 | ¥783,200 |
BE 652ce WHB | ¥979,000 | ¥783,200 |
BE 912ce | ¥1,320,000 | ¥1,056,000 |
BE 912ce WHB | ¥1,320,000 | ¥1,056,000 |
BE 816ce | ¥913,000 | ¥730,400 |
BE 717 | ¥693,000 | ¥554,400 |
BE 717 WHB | ¥720,500 | ¥576,400 |
BE 717e | ¥731,500 | ¥585,200 |
BE 717e WHB | ¥759,000 | ¥607,200 |
BE 517 | ¥649,000 | ¥519,200 |
BE 517 WHB | ¥671,000 | ¥536,800 |
BE 517e | ¥704,000 | ¥563,200 |
BE 517e WHB | ¥726,000 | ¥580,800 |
価格だけを見ると、ちょっと引いてしまいますが・・・
是非、騙されたと思って試奏してみてください。
まとめ
僕は初めてビルダーズ・エディションを手にした時、とにかく衝撃でした。
抱えた瞬間から明らかに「これは違う!」と感激したのを今でも覚えています。
それまで誰も疑ってこなかったギターの常識を根本から変える、このギターは将来的にテイラーの標準仕様になることは間違いないと思います。
価格的に初心者に向けてこのモデルをオススメするのは気が引けますが、2本目、3本目のギターを探している人には「是非、触ってみて!」と直接売り込みたいくらいオススメです!