GS Miniはテイラー(Taylor)から2010年に発表されたミニギターです。
「taylorguitars.com」より引用
ミニギターと言っても、そのサイズはフルとミニの中間で、本格的な演奏にも耐え得る仕様となっています。
2022年時点で生産本数はシリーズ累計40万本を超え、初心者のはじめの1本としても人気があります。
この記事では、そんなGS Miniのラインナップや基本スペックを紹介。
さらに実機を用いてユーザーに支持される秘密を紐解いていきます。
GS Miniのラインナップ
GS Miniには4つの種類、ピックアップ(PU)の有無を含めて7モデルが展開されています。
- GS Mini Rosewood
- GS Mini-e Rosewood
- GS Mini Mahogany
- GS Mini-e Mahogany
- GS Mini-e Mahogany SEB
- GS Mini-e Koa
- GS Mini-e Koa Plus
モデル名に「-e」が付いているものがPUを搭載したエレアコ仕様です。
その他、主な違いはボディのトップとサイド&バックに使われている木材(トーンウッド)の種類。
トーンウッドの組み合わせで見ると、GS Miniは大きく3種類に分類されていることが分かります。
スプルース × ローズウッド
GS Mini Rosewood / GS Mini-e Rosewoodはトップにシトカ・スプルース、サイド&バックにレイヤードのローズウッドという組み合わせ。
GS Mini Rosewood / GS Mini-e Rosewood |
ボディ・シェイプ | グランド・シンフォニー |
トップ材 | シトカ・スプルース |
サイド&バック材 | レイヤード・ローズウッド |
ネック材 | トロピカル・マホガニー |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | X |
ピックアップ | ES-B(PUモデルのみ) |
シトカ・スプルース(Sitka Spruce)はマツ科の針葉樹で、テイラーに限らず、ほとんどのギターメーカーがトップに採用している材です。
「taylorguitars.com」より引用
サイド&バックのインディアン・ローズウッド(Indian Rosewood)は、インド東部が原産のトーンウッド。
「taylorguitars.com」より引用
切ったばかりの材はバラのような香りがすることから、その名が付けられました。
そのサウンドは、低音域と高音域が前面に出て、中音域はやや控えめ。
そのため「歌モノに最適」と言われています。
マホガニー × サペリ
GS Mini Mahogany / GS Mini-e Mahogany / GS Mini-e Mahogany SEBは、トップにマホガニー、サイド&バックにサペリという材の組み合わせ。
GS Mini Mahogany / GS Mini-e Mahogany / GS Mini-e Mahogany SEB |
ボディ・シェイプ | グランド・シンフォニー |
トップ材 | マホガニー |
サイド&バック材 | レイヤード・サペリ |
ネック材 | サペリ |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | X |
ピックアップ | ES-B(PUモデルのみ) |
マホガニー(Mahogany)はセンダン科の植物で、低音域に膨らみのあるウォームサウンドが特徴。
「taylorguitars.com」より引用
テイラーでは主に中南米を産地とした材が使われていて、レギュラーモデルのネック材としても使用されています。
サイド&バックのサペリ(Sapele)はセンダン科の落葉広葉樹。
「taylorguitars.com」より引用
マホガニーと同じセンダン科ですが、厳密にはマホガニーではありません。
しかし、そのサウンドは「サペリ・マホガニー」という異名を持つほどマホガニーに似ています。
プレイスタイルでは、フィンガー・ピッキングをする人に選ばれる傾向がある材です。
尚、GS Mini-e Mahogany SEBは色違いです。
型番にある「SEB」はカラー名「シェイデッド・エッジ・バースト」の頭文字。
コア × コア
GS Mini-e Koaはボディの全面にコア材を使ったオールコア・モデルです。
GS Mini-e Koa |
ボディ・シェイプ | グランド・シンフォニー |
トップ材 | ハワイアン・コア |
サイド&バック材 | レイヤード・コア |
ネック材 | サペリ |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | X |
ピックアップ | ES-B |
ハワイアン・コア(Hawaiian Koa)は、その名の通りハワイが原産の材。
「taylorguitars.com」より引用
ローズウッドとマホガニー、2つの特性を併せ持ち、中音域の存在感が強いサウンド。
新品の状態なら、弾き込むほどに甘く深いサウンドに変化する材となっています。
尚、コア材を使ったモデルはPU付きのみの展開です。
GS Mini-e Koa Plusは特別仕様
GS Mini-e Koa Plusは、GS Mini-e Koaをグレード・アップさせた特別仕様のモデルです。
GS Mini-e Koa Plus |
ボディ・シェイプ | グランド・シンフォニー |
トップ材 | ハワイアン・コア |
サイド&バック材 | レイヤード・コア |
ネック材 | トロピカル・マホガニー |
フレットボード材 | エボニー |
ブレーシング | X |
ピックアップ | ES2 |
詳細は後述しますが、GS Mini-e Koaとの主な違いは・・・
- 上位クラスと同じPUを搭載
- 頑丈なエアロケースが付属
プロの現場にも耐え得る本格仕様となっています。
GS Miniの特徴をレビュー
ここからはGS Miniシリーズに共通する特徴の紹介と共に、僕が実際に使って感じていることをレビューしていきます。
ちょうどいい抱え心地のミディアムサイズ
GS Miniのサイズはテイラーのフルサイズとミニサイズ(Baby Taylor)の中間です。
フルサイズだと弾くのに気合を入れないといけない・・・
かと言って、ミニギターだと小さすぎる・・・
そうした悩みを解消する“弾きやすいサイズ感”がGS Miniが売れる理由のひとつと言えます。
しかし、ただスケールダウンしただけでなく、小さいながらも“鳴り”を重視した特別な設計となっているのが特徴です。
リリーフ・ルート
鳴りを重視した設計のひとつが「リリーフ・ルート」(Relief Rout)です。
リリーフ・ルートとは、ボディ・トップの内側のエッジに沿って溝を彫り、トーンを向上させる技術。
赤線の辺りに沿って溝が掘ってある。
サウンドホールからボディの内部を覗いてみると、確かに溝が掘られているのが分かります。
溝を彫った箇所は板の厚みが薄くなるので、必然的に振動効率が上がります。
よって、大きな音で鳴らすことができるのです。
実際にストロークしてもGS Miniは本当によく鳴ります。
小さくても鳴るボディ・シェイプ
“鳴り”を決める要素のひとつにボディ・シェイプが挙げられます。
ボディ・シェイプとはボディの形状のこと。
テイラーには6つのオリジナル・シェイプがあり、GS Miniはグランド・シンフォニー、通称GSという形状です。
GSは2006年に発表されたシェイプで、テイラーではスタンダードなGAよりもお尻の膨らみが大きいのが特徴。
より低音が響きやすい作りとなっているので、GS Miniにこのシェイプが採用されたというのも頷けます。
そしてGS Miniならでは設計が「アーチドバック」(Arched Back)です。
ボディのバックを膨らませることで低音の響きを増幅させています。
さらに、バック内部のブレーシングを排除することで空洞体積を増やし、より音が響きやすく設計されています。
尚、フルサイズのGSは2020年にリニューアルされ、カッタウェイ部分にサウンドホール(サウンドポート)が追加されましたが、GS Miniにはありません。
剛性の高い合板ボディ
GS Miniシリーズに共通するスペックのひとつに・・・
トップ : 単板
サイド&バック : 合板
という特徴が挙げられます。
トップに使われている「単板」は、木材をそのまま切り出した一枚板のこと。
GS Mini-e Rosewoodのトップ。断面の木目が繋がっているのが分かる。
サイド&バックに使われている「合板」は、ベニア板のように薄くスライスした木材同士を重ねて圧着させた板のことを指します。
GS Mini-e Rosewoodのバックの断面。3層のレイヤード構造になっている。
一般的に、アコギは高級(高価)になるほどオール単板になります。
合板は切断や曲げなどの加工がしやすいので、比較的、低価格のモデルに使用されます。
“鳴り”の面では、合板よりも単板のほうが良いとされますが・・・
合板のメリットは、剛性が高く、多少荒く扱っても壊れにくいこと。
温度や湿度の変化にも強く、ピッチが狂いにくいのも特徴です。
こうした材の構成で、ミニギターの弱点を克服している点もGS Miniの強みと言えます。
アコギの単板と合板の違いは?シリーズ別の見分け方も紹介【Taylor】
オリジナルのピックアップが秀逸
対象モデル : GS Mini-e Rosewood / GS Mini-e Mahogany / GS Mini-e Mahogany SEB / GS Mini-e Koa
型番に「-e」がつくモデルは、ピックアップ付きのエレアコ仕様です。
ピックアップとは、ギターの音を外部へ出力するためのもので、アンプに接続することで大音量が必要な場面(ステージなど)で活躍します。
GS Miniに搭載しているプリアンプにはチューナー機能がついているので、わざわざ別売りのチューナーを買う必要がありません。
アンプに接続している時にチューニングすると、自動的に消音モードになる。
こうした細かい気配りは嬉しい仕様です。
専用のギグバッグが付属
※GS Mini-e Koa Plusは下の章を参照
GS Miniには専用のギグバッグが付属します。
「taylorguitars.com」より引用
内部にはクッションが配され、本体がぴったり入るので持ち運ぶ際に中で暴れることがありません。
「taylorguitars.com」より引用
ちなみにハードケースが欲しい人は、純正ではないですがSKBというメーカーから専用のハードケースが出ています。
GS Mini-e Koa Plusは特別仕様
GS Miniシリーズで唯一、型番に「Plus」が付くGS Mini-e Koa Plusは特別仕様のモデルです。
「taylorguitars.com」より引用
通常のGS Mini-e Koaとの違いは以下の2点。
GS Mini-e Koa |
GS Mini-e Koa Plus |
---|---|
ピックアップ | |
ES-B |
ES2 |
付属ケース | |
ギグバッグ |
エアロケース |
上位クラスのピックアップを搭載
GS Mini-e Koa Plusのピックアップは、テイラーの上位クラスに付いているものと同じES2(Expression System 2)が搭載されています。
「taylorguitars.com」より引用
ES2はES-Bと同じピエゾ方式のPUですが、ピエゾ特有の不自然な機械音(ピエゾ臭)が解消され、限りなく生音に近いサウンドを出力できます。
頑丈なエアロケースが付属
GS Mini-e Koa Plusに付属するケースは専用のエアロケースです。
「taylorguitars.com」より引用
普通のギグバッグよりも頑丈で、かつリュックのように背負うこともできるので、持ち運びに重宝します。
別売りで買うと3万円する高級ケースです。
推奨弦はエリクサー
GS Miniの工場出荷時に張られている弦はエリクサー(Elixir)の「フォスファーブロンズ・ナノウェブ・ミディアム(Phosphor Bronze NANOWEB Medium)」です。
数ある弦の中でテイラーがエリクサーを推奨する理由は「長持ちするから」
一般的なメーカーの弦は1ヶ月ほどで錆び始めますが、エリクサーは、その2〜3倍は持つと言われています。
その理由は、弦を極薄の膜でコーティングしているから。
「elixirstrings.jp」より引用
このコーティングが湿気や汗など、皮膚に付着した汚れから弦を守ることで、サウンドの劣化を防いています。
最近は他メーカーでもコーティング弦が発売されていますが、実は弦をまるごとコーティングしているのはエリクサーだけです。
まるごとコーティングはエリクサーの特許技術なので、他メーカーは真似できないというわけです。
他メーカーは、巻弦の隙間はコーティングしていないので、そこから劣化が始まると言われています。
僕もいろんなメーカーの弦をテイラーに張ってきましたが、今のところエリクサーで落ち着いています。
【Taylor】工場出荷時に張っている弦まとめ【Elixir / D’Addario】
価格について
GS Miniは実勢売価で10万円を切る価格が魅力でしたが、2022年7月に値上がりし、すべてのモデルが10万円を超えています。
メーカー希望小売価格 | 実売参考価格 | |
GS Mini RW | ¥165,000 | ¥132,000 |
GS Mini-e RW | ¥192,500 | ¥154,000 |
GS Mini Maho | ¥143,000 | ¥114,400 |
GS Mini-e Maho | ¥165,000 | ¥132,000 |
GS Mini-e Maho SEB | ¥192,500 | ¥154,000 |
GS Mini-e Koa | ¥209,000 | ¥167,200 |
GS Mini-e Koa Plus | ¥258,500 | ¥206,800 |
この記事の執筆段階では、まだ旧売価で出しているショップもあるので、少しでも安く手に入れたい人は早めの購入をおすすめします。
中古も狙い目
GS Miniシリーズの中古市場の価格は・・・
PUなし : 4〜6万円
PUあり : 6〜9万円
中古の場合、現在は生産終了している「スプルース×サペリ」「スプルース×ウォルナット」などの組み合わせも選ぶことができます。
さらに、サイド&バックにオヴァンコール(Ovangkol)やブラックリンバ(Black Limba)を使ったリミテッド・モデルも入手可能。
個人的には、サブギターとして1本持っておきたい人には中古がおすすめです。
まとめ
僕はGS Mini-e Rosewoodを書斎に置いていて、ちょっとした空き時間に弾いています。
この記事の執筆時も、書く→弾く→書く→弾くを繰り返して、たぶん弾いている時間の方が長いかもしれません。笑
何が言いたいかと言うと、そのくらい気軽に弾けるのがGS Miniの良さだということです。
もちろん楽器としての完成度も高く、配信やステージでも十分戦力になってくれます。
このレビューが少しでも購入の参考になれば幸いです。