テイラーギター(Taylor Guitars)は主にアコギ(エレアコ)を製造するメーカーですが、その数は定番モデルだけでも、ざっと100本を超えます。
これだけ種類があれば、自分の好きなサウンドやプレイスタイルに合ったギターに出合える確率は高いです。
その反面、たくさんありすぎて選べない・迷う、といったデメリットも・・・。
でも、それぞれに決まったコンセプトがあり、それに沿ってシリーズに分けられています。
この記事では、テイラーが展開しているシリーズを紹介し、コンセプトやターゲットについて解説。
ギター選びの参考になれば幸いです。
Taylorギターのシリーズ
現在、テイラーが展開するのは以下の16シリーズ。
- Presentation Series
- Koa Series
- 900 Series
- 800 Series
- 700 Series
- 600 Series
- 500 Series
- 400 Series
- 300 Series
- American Dream Series
- GT Series
- 200 Series
- 100 Series
- Academy Series
- GS Mini Series
- Baby Series
ただ並べただけではよく分からないので、グレードで分けたものが下の画像になります。
基本的には頂点に行くほど価格も上がりますが、材のグレードやサウンド、搭載される機能も豪華になっていきます。
例外として、シリーズではないですが紹介しておきたいのが上から2つ目のビルダーズ・エディション(Builder’s Edition)。
これについても下記で解説していますので、是非、読んでください。
シリーズ別の紹介&解説
それでは、ここから各シリーズの特徴を紹介・解説していきます。
グレードの高い順に紹介していますので、目的のシリーズがあれば読み飛ばしてください。
Taylorの最高峰シリーズ
こちらはテイラーの最高峰のシリーズであるプレゼンテーション・シリーズ(Presentation Series)です。
Presentation Series
プレゼンテーション・シリーズは、テイラーでも最も木目がキレイで高品質な材を贅沢に使い、長時間の演奏でも疲れにくいアームレストを搭載。
装飾も豪華な、見た目のデザインにもこだわったモデルです。
PS14ce Honduran Rosewood |
代表的なモデルが、サイド&バックにホンジュラス産のローズウッド、トップにシンカー・レッドウッドを使用したPS14ce Honduran Rosewood。
シンカー・レッドウッドとは、米・カリフォルニア州の河川に長年沈んでいた希少な古材で、温かみのある倍音を響かせます。
尚、プレゼンテーション・シリーズは日本の市場では滅多に出回らず、中古でも軽く100万円を超えるので、楽器というよりは美術品の様な扱いです。
売れ筋はここから!定番のKoa&3桁シリーズ
テイラーでも売れ筋のシリーズがハワイアン・コアを使ったコア・シリーズと、3桁の数字で構成された3桁シリーズ。
基本的には使用する材の種類が違い、それによりサウンドに個性が出ます。
Koa Series
コア・シリーズは定番シリーズでは最上位に位置するシリーズ。
一般的にコア材を使ったギターはあまりなく、テイラーのようにレギュラーで製造しているのは珍しい方です。
そのことから、コアギターはテイラーの代名詞のようにもなっています。
K24ce |
代表的なモデルはボディ全面にハワイアン・コアを使用したオールコアのK24ceです。
ハワイアン・コアは文字通り、ハワイ原産のトーン・ウッド。
マホガニーとローズウッドの2つの特性を持ち、中音域の存在感が強く、高音域の明るいサウンドが特徴。
新品の状態なら、弾き込むほどに甘く深いサウンドになっていくのがハッキリと分かる材です。
純粋なコアのトーンを楽しむならこのモデルがおすすめです。
900 / 800 / 700 Series
900・800・700は、テイラーの定番3桁シリーズでも上位のシリーズです。
共にサイド&バックに、アコギの定番材であるインディアン・ローズウッドが使用されています。
インド東部が原産のインディアン・ローズウッドは、伐採直後にバラの様な香りがすることから、その名が付いたトーンウッド。
暖かみや深みを感じる太い低音域に、きらめく高音域、伸びのあるサスティーンなど豊かなサウンドが特徴。
弾き語りなどの歌モノに最適な材として知られています。
下の写真は2020年にリニューアルされた800シリーズです。
「taylorguitars.com」より引用
700・800・900シリーズの違いはトップ材。
700はルッツ・スプルース、800・900はシトカ・スプルースです。
さらに、800・900シリーズには、ボディの右腕が当たる箇所にラディウス・アームレストが搭載されています。
「Taylor公式HP」より引用
そして、900シリーズは、ゴトー製の最上位機種「510」ペグを使用し、ヘッドやボディにアバロン(貝)の装飾が施された豪華な仕上げとなっています。
「Taylor公式HP」より引用
600 Series
600シリーズは、サイド&バック材にメイプルを使用したシリーズです。
「Taylor公式HP」より引用
代表的なモデルは、上の画像の614ce。
メイプルは日本でも馴染みの、楓(かえで)のこと。
虎目模様が美しく、ギターでは定番の材です。
テイラーではアメリカ北部からカナダにかけて生育しているものを使用。
その特徴はプレイヤーの意思がそのまま音に反映すること。
つまり、暗く弾けば暗い音、明るく弾けば明るい音になります。
フィンガーピッキングなど繊細な表現に向いた材です。
500 Series
500シリーズは、サイド&バックにマホガニーを使用したシリーズ。
524ce |
代表的なモデルはボディ全面にマホガニーを使用したオールマホの524ceです。
マホガニーはアコースティックギターでは定番中の定番の材で、テイラーでは中南米産のものを使用。
ふくらみのあるウォーム・サウンドが特徴で、オーバートーンが少なく、ピックによるストロークを多用するプレイにオススメです。
個人的にはジャズやブルースによく合うという印象です。
400 Series
400シリーズは、700・800・900シリーズ同様、インディアン・ローズウッドを使用しています。
414ce Rosewood |
400シリーズのローズウッドは、700・800・900シリーズの基準では弾かれてしまうものを使用しており、比べると木目の入りが弱いです。
しかし、トーンウッドとしての鳴りは他メーカーに引けを取らないため、手頃なローズウッドモデルとして人気のシリーズです。
300 Series
300シリーズには、サペリ(Sapele)という材が使用されています。
314ce |
こちらの314ceは単板モデルで売れ筋のベストセラー。
サイド&バック材として使用されているサペリは、主にアフリカの赤道付近に分布する広葉樹で、明るくクリアで歯切れのいいサウンドが特徴です。
低音域から高音域までバランスの取れたギターを探している人にピッタリのモデルです。
また、300シリーズにはブラックウッドを使用したモデルもあります。
324ce |
代表的なモデルである324ce Blackwoodは、トップ材にマホガニー、サイド&バック材にブラックウッドを使用。
ブラックウッドは、ドライでボリュームのある音が特徴で、ジャンルやシチュエーションを問わず対応することができるオールラウンダーです。
【番外編】Builder’s Edition
ビルダーズ・エディション(Builder’s Edition)はシリーズではないですが、是非、紹介したいモデルです。
どういったモデルかというと、上記で紹介した300〜900シリーズとコア・シリーズに弾き心地の良さを追求した特別バージョンです。
2022年6月時点で9モデルがラインアップされていて、それぞれ定番3桁シリーズと弾き比べてもらうと、その弾きやすさが体感できるモデルになっています。
こちらの記事ではビルダーズ・エディションについてまとめていますので、是非、読んでみてください。
普及促進シリーズ
ここからは「手頃で本格的なテイラーギターが欲しい」という人に向けたシリーズです。
個人的には、スペックと価格の両面から見て、これからギターをはじめたいという初心者にもオススメしたいシリーズです。
American Dream Series
アメリカン・ドリーム(American Dream)は2020年に発表された新しいシリーズ。
AD17e |
オール単板ボディにV-Classブレーシングなど、定番3桁シリーズと同等のスペックを盛り込み、必要最低限のシンプルな装飾ですが、エッジを面取りして弾きやすさを追求。
それでいて手ごろな価格なので、後述するアカデミー・シリーズと弾き比べてもらいたいシリーズです。
GT Series
こちらも2020年に登場した新シリーズです。
GTe Urban Ash |
GTとは、グランド・シアター(Grand Theater)の略で、テイラーの6つ目のオリジナル・シェイプとして登場したボディ形状です。
サイズはフルボディではなく、ミニでもない、ミディアムという位置づけで「ミニギターは欲しいけど、小さすぎて弾きにくい」という不満を解消してくれる絶妙なサイズ感。
2本目の家ギターとしても活躍するモデルになっています。
初心者向けのエントリーシリーズ
ここからは、テイラーの中でも初心者を中心に人気を誇るシリーズが並びます。
上のシリーズとの大きな違いは、サイド&バック材が合板(レイヤード)であることです。
100 / 200 Series
100・200シリーズは、テイラーのラインアップで最も売れる看板商品です。
214ce Rosewood |
114e Walnut |
214ceはサイド&バックにレイヤード・ローズウッド、114eはレイヤード・ウォルナットを使用。
共に単板シリーズと同じピックアップシステムを搭載しながらも、10万円台で手に入るエントリーモデルの代表格です。
Academy Series
アカデミーシリーズは、「ビギナーが途中でギターをやめてしまわないように」をコンセプトに、2017年にスタートしたシリーズです。
「Taylor公式HP」より引用
一般的に、初心者用のギターは「安い=弾きにくい」が常識でした。
アカデミー・シリーズは、その常識を疑い、握りやすいナット幅・ショートスケール・アームレストなど弾きやすさにこだわった機能を搭載。
さらに、価格も実売で10万円以下に抑えています。
初めてギターを買う人には、このシリーズがおすすめです。
コンパクトサイズのかわいいシリーズ
次に紹介するシリーズは、いわゆるミニギターです。
これからギターを始めたい小学生や、家ギターとして重宝されるベストセラーです。
GS Mini Series
GS Miniは2010年に登場。
Taylorのオリジナル・シェイプであるグランド・シンフォニー(Grand Symphony)をスケールダウンさせつつも、大人でも抱えやすいサイズ感になっています。
GS Mini Rosewood |
代表的なモデルはGS Mini Rosewood。
トップ材にシトカ・スプルース、サイド&バック材にレイヤード・ローズウッドを使用しています。
その他、マホガニーやコアを使ったモデルも存在します。
モデルによって見た目もガラッと変わるので、好みで選ぶといった楽しみ方もできます。
Baby Series
こちらのベビー・シリーズは、アコギの定番シェイプであるドレッドノートをスケールダウンさせたシリーズ。
初心者向けというよりも、小学生前後の体の小さい子供向けと言ったモデルです。(もちろん、初心者でも安心して弾けます)
「Taylor公式HP」より引用
Baby Taylor |
中でも人気なのがBaby Taylor(BT1)。
トップ材にシトカ・スプルース、サイド&バック材にレイヤード・ウォルナットを使用しています。
材の組み合わせは100シリーズと同じなので、弾き比べて、抱えやすいサイズを選ぶといいと思います。
まとめ
テイラーの展開するシリーズは、コンセプトが明確なので、自分の理想とするシリーズからギターを選ぶのが一番の近道です。
そして、これが一番言いたいことですが・・・
初心者だから初心者向けのギターを買わないといけないということはありません。
反対に、初心者なのに上級者向けのモデルはダメといったことも絶対にないです。
現に、僕は10年以上のブランクがある状態でビルダーズ・エディションを購入し、自分が思った以上に上達しています。
いいモデルに出合うと愛着も湧くので、是非、理想の1本を探してみてください。